水の精霊ウンディーネ。精霊には魂が無かった!
「四大精霊」のなかで最も精霊=妖精らしい精霊は、水の精霊である「ウンディーネ」ではないでしょうか。ウンディーネと言えば、儚げな美しい女性の姿がイメージされるかも知れません。
しかし、じつは精霊であるウンディーネには性別が無く、それ以上に魂すら無いというのですが、これはどういうことなのでしょうか。
美しい女性の姿をしていても魂の無かったウンディーネ
火、水、空気(風)、土の「四大元素」を司る「四大精霊」の存在を唱えた、16世紀の錬金術師で医師、化学者で神秘思想家のパラケルススは、火の精霊サラマンダー、水の精霊ウンディーネ、空気と風の精霊シルフ(シルフィード)、土または大地の精霊グノーム(ノーム)は、それぞれ姿かたちや話し方、身振りも人間に似ていて、物も使用し知性も理性もあるのだが、「魂(ゼーレ)」は持っていないとしました。それは彼ら彼女らが「アダムから生まれた者」ではないためであり、人間やその他の動物とは異なった、別の被造物であるからだということなのです。
ですからウンディーネで言えば、どんなに美しい女性の姿をしていて人間と同じ言葉を話したとしても魂が無いという、人間でいえば抜け殻のような存在だということでしょうか。
パラケルススが言う「魂(ゼーレ)」とは、近代以降の考え方に置き換えると「自我」ということだそうです。
少し難しい話になりますが、自我とは自分自身を他の者とは区別し自分として意識するものであり、人間としての自分自身を成り立たせるものですが、自然の元素と一体化しその元素を司り守護する精霊には、そういった自我が無いということなのでしょう。
ウンディーネが人間と結婚し魂を得るための制約とは
しかし、ウンディーネは美しい女性の姿であるがゆえに人間の男性と知り合い、恋に落ちてしまいます。更には、人間の男性と結ばれることができれば、「魂(ゼーレ)」を得ることができるというのです。
しかし、たとえ人間と結婚し「魂(ゼーレ)」を得たとしても、ウンディーネには3つの制約が課せられていました。それはこんな制約です。
2.夫が浮気をした場合、ウンディーネ自身が水中に戻ったとしても夫を殺してしまわなければならない。
3.人間の夫と別れ、水中に戻ったウンディーネは再び「魂(ゼーレ)」を失う。
なんとも厳しい制約というか掟なのですが、人間とは全く異なる存在のウンディーネが人間の男性と結ばれ「魂(ゼーレ)」を得るには、それだけ厳しい条件があったというわけです。
そこから、悲恋の物語が創作されていくわけですが、それはまた別の記事でご紹介することにしましょう。
こういったウンディーネにまつわる特徴は、パラケルススが同じ水の中に生きる人間とは異なる存在である人魚の伝説からヒントを得た、という説もあります。後世のアンデルセンの人魚姫の物語も悲恋で終わり、じつは哀しくて怖い物語なのです。