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狼男のルーツは?西欧モンスター界の大スター、発祥の地を探る

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吸血鬼ドラキュラやフランケンシュタインの怪物と並んで、西欧の三大モンスターのひとつとも言えるのが「狼男」です。

満月の夜に、月の怪しげな光を浴びて人間から狼男へと変身する凶悪な獣人。まさにヨーロッパを代表するモンスターですが、それではこの狼男はいったいいつどこで生まれたのでしょうか?今回は、この狼男の起源を探ってみたいと思います。

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狼男は狼憑きの獣人

狼男というのは、人間から狼または狼と人間が合体した姿へと変身する、つまり「獣人」です。獣人は世界各地の伝承に現れ、現代ではファンタジー小説、ライトノベル、アニメやゲームなどにも登場する、獣の姿や特徴を持った人間のことです。人間が完全な狼の姿に変身してしまった場合には、それを獣人と呼ぶべきなのかは良くわかりませんが、広い意味では獣人のうちの一種ということでしょう。

ちなみに人間と合体した姿を持っていたり変身したりする獣には、狼のほかにも猫や猿、牛や馬、魚やトカゲから龍に至るまでじつに様ざまです。遥か古代ではエジプトの神々には多くの獣人(獣神)がいますし、例えば天空と太陽の神「ホルス」は隼の頭と人間の身体を合体させた姿で描かれます。ギリシャ神話に登場する怪物のミノタウロスは、牛と人間から生まれた牛頭に人間の身体の怪物ですし、日本でも「烏天狗」などはカラスの頭と人間の身体が合体していますから、これも獣人(獣神?)と言えるでしょう。

ただ狼男の場合は、こういった動物や獣と人間や神との合体という形態でありつつ、人間に獣が憑いた(憑依した)、つまり「狼憑き(Lycanthropy)」という側面があります。

 

世界各地には獣憑きが伝わっている

人間に獣が憑くという伝承は世界各地にあって、ヨーロッパでは狼のほか犬や牛、クマも憑き、アフリカではハイエナ、インドや中国では虎、中南米ではジャガー、そして日本では狐憑きで知られるようにキツネが人間に憑きます。

このように世界各地で古代から様々な獣、動物が人間に憑いて「獣化」したわけですが、そのなかでもどうして狼憑きが怖れられ、凶悪なモンスターへとなっていったのでしょうか。

それを探る前に、ヨーロッパ世界で最も古いと思われる狼憑きの記述をご紹介しましょう。

 

年にいちど狼男へと変身する古代部族ネウロイ

古代ギリシャの歴史家であるヘロドトス(紀元前485年頃から紀元前420年頃)の「ヒストリアイ(歴史)」という書物には、「ネウロイ族」という部族のことが記されています。このネウロイ族は黒海の北方、現在のポーランド東部からベラルーシ、リトアニア方面にかけての広い地域に住んでいたと考えられている部族で、狼男に扮する祭祀を行うことで知られていたのだそうです。

ヘロドトスの記述によると、伝聞であるとしながらどうやらこのネウロイ族は魔法を操る部族であるらしく、1年にいちどだけ狼の姿に変身して数日過ごし、やがて元の人間に戻るのだとか。これが狼の扮装をするシャーマニズムの祭祀の話なのか、それとも狼に変身する魔法の話なのかはわかりません。ヘロドトス自身も信じられないと書いていますが、それを伝えたギリシャ人は誓って本当であると言ったのだそうです。

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