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龍はヘビから進化した?! 北部と南部とで系統が異なる中国の龍

蛇
 
この地球のなかで、龍のふるさとのひとつは中国大陸です。その北方、モンゴルやツングース(東北アジアの民族)の地と交わる遼河の流域の大地に、世界最古とも言える龍が生まれた痕跡がありました。

しかし中国大陸はとても広く、北の遼河の流域とは別に、東南アジアにも近い南方の地域にも龍の伝説は残っています。ただし中国南方の龍の伝説には特徴があります。それは、南の龍はヘビが進化して生まれたものだと考えられていることなのです。

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またもうひとつの特徴は、南方の龍には人々に禍いをもたらす悪龍もいたということ。まるで西洋のドラゴンのように、退治されてしまう龍の伝説も残っています。

 

中国南方の蛇神信仰

ヘビは古代より、世界中で信仰の対象となっていました。それは手足の無い長い身体であり、種類によってはとても大きなものもおり、また毒を持つものもいることなどと無縁ではありません。特に脱皮を繰り返して成長するヘビは、「再生」や「生産」「豊穣」など生命の象徴とされ、水が循環するシンボルでもありました。また大地を這って進む姿は「大地母神」にも結びつけられています。

このようなヘビがシンボルとする、大地や水、生産や豊穣に関わりの深い農業生産が早くから始まった中国南方には蛇神信仰が古くからあり、やがてそのヘビは龍へと進化していきます。

例えば中国南部、揚子江(長江)につながる湖南省の大きな淡水湖である洞庭湖付近は稲作地帯ですが、龍神が棲む「龍宮伝説」が多くあります。この長江流域には、紀元前14000年頃から紀元前1000年頃までの長い年月にわたる「長江文明」という古代文明があり、その特徴は畑作中心の「黄河文明」と異なり、稲作中心でありその源流とされています。また長江文明の担い手は、現在は少数民族となってしまった「苗族(みゃおぞく)」であると言われています。

 

龍に進化するヘビ

中国にはヘビが1000年生きると、龍に変わるという伝説があります。
「梁(りょう)」の時代(502年から557年)の『述異記』という書物には、「水虺(き/まむし)は500年で蛟(みずち)となり、蛟は1000年で龍となる」と記されています。「虺」は訓読みで「まむし」と言うようにヘビのことですから、ヘビは1000年生きると龍になると言うことです。また500年で成長する「蛟」は、または「蛟龍(こうりゅう)」と言うように龍の一種で、ヘビが龍になろうとする中間の段階のもの。身体はヘビだが手足を持ち、大水を起こすとされます。

後の「北宋」の時代(960年から1127年)の『太平広記』という書物の「成都記」には、蜀郡(古代の四川省の一部、成都は三国志の時代に「蜀」の都だった)の守となった李氷という人が、蛟龍が暴れて洪水を起こし人々を苦しめるので、牛に変身して退治するという話が載っています。まるでヨーロッパのドラゴン退治の伝説のようですね。

この時代の洪水というのは、稲作文化の土地においては最大の災害でした。また李氷が牛に変身するのは、南方では牛は神に等しい存在で、これはこの地域だけのことではなく例えばインドのヒンズー教で牛を神聖視するなど、世界的(特に暖かい地域)に見られる宗教観です。

この話にある、ヘビが龍に変身する途中の暴れる蛟龍を牛に変身した英雄が退治するという伝説は、実は日本の神話にも関係があるように思われますが、その話はまた別の記事に譲りたいと思います。

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