> >

変遷する賢者の石:錬金術の歴史を紐解く

05cc675f725bcf77dda27a5176f0fee8_s
 
中世ヨーロッパの錬金術および錬金術師の評価は、必ずしも好意的なものばかりではありませんでした。現代においても未だに実現できていない概念であることからもわかるとおり、錬金術は、中世ヨーロッパ当時としての科学的な革新性やアイデアとしては斬新だったものの、「誇張された絵空事」として捉える人々も多く、時がたつにつれ錬金術そのものや錬金術師の存在が、半ば「胡散臭いもの」という評価が支配的となっていきます。

そんな中で、わかりやすい形で錬金術を再考するというアピールがなされるようになっていきます。ここで登場してきたのが「賢者の石」です。

スポンサードリンク


 

別名「錬金薬」

「賢者の石」は、錬金術がヨーロッパに伝わった12世紀以降に、その存在を研究されるようになっていきます。この石は、卑金属を貴金属に変えたり、人間が病気にならなかったり、不老不死になったり、さらには魔法を使ったり、姿を消したり、はては空を飛んだりもできるようになる、と考えられました。

現在でいうところの「都市伝説」的な位置づけになりかけていた錬金術は、「賢者の石があれば実現できる」というロジックを与えられたことで、世の多くの人々に対しても、わかりやすい形で錬金術の実現性をアピールすることにもなりました。

逆にいえば、「賢者の石」登場以降の錬金術は、「賢者の石ありきの存在」となり、「これがなければ何一つ実現できないもの」という、それまでとは違った構成を持つ概念となっていったのです。このため賢者の石は、「万能薬」という意味を込めて別名「錬金薬」ともいわれていました。

 

賢者の石は粉末だった?!

「賢者の石」は、概念の登場当初はその名のとおり「石の形状をしている」と考えられましたが、その後さまざまな形状が考えられました。その中には、「粉末状である」、「いや液体である」、「石よりも固い物質である」など、諸説入り乱れた状態で議論されていました。

色についても、「黄金色」、「赤」、はたまた「白」、「黒から白、赤に順に変わっていくもの(途中緑や黄も経由する)」など、実在するものという前提で、多くの仮説がたてられました。このあたりから「賢者の石」は、先に述べた「錬金薬」のほかにも、「エリクサー」や「ティンクトラ」といった呼称でも扱われるようになっていきます。

色について当時有力だと考えられていたのが「色が黒から白、赤に順に変わっていく」という説で、黒は死や腐敗を暗示、白で復活・再生が起こり、赤が完成形であるという解釈は、多くの人々に受け入れられました。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

カテゴリ: その他

Comments are closed.