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ドッペルゲンガー解明のキーワード「オートスコピー」とは?

フェアリー妖精
 
同一人物が二人存在することを、自分自身または他人が認識する、というドッペルゲンガー現象は、アメリカ元大統領エイブラハム・リンカーンや、日本の小説家である芥川龍之介、19世紀のフランス人エミリー・サジェなど、比較的広く知られているような事例も多く存在するものの、謎の完全な解明には至っていません。またその報告内容の不思議さから、超常現象の枠で捉えられていることも多いようです。一方で、「人間の他者認識のメカニズム」の観点から、医学や心理学の分野からの原因究明の動きも、さかんにおこなわれています。このアプローチの中に、オートスコピーというキーワードが存在しています。

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分身の一種がオートスコピー?

自分自身がもうひとり現れて、それが当人や他者に目撃され、その後当人の印象として記憶には残るが、事実として客観的に証明できる形には残らないケースは多くあります。このうち、「当人の印象としての記憶の発生」に着目して、心理学や病理学の面からの研究の中で使われているキーワードが、オートスコピーです。日本語に訳すと「自己像幻視」といわれ(訳の時点で「幻」という言葉が入っているので、若干認知バイアスがかかることは問題ではありますが、ここでは取り上げません)、一般には意識障害時に起こる幻視(=実際には起こっていないことが、人間の認識の中で「起こったこと」として捉える)を指しています。

 

鏡像幻視やリリパット幻視などのバリエーション

意識障害における幻視には、鏡像幻視やリリパット幻視など、いくつものバリエーションがあることがわかっています。前者は「あたかも鏡のように、現在の自分とそっくりな存在を認識する」現象、後者は「実態よりも小さく認識する」現象(リリパットとは、1700年代のアイルランドの風刺小説である「ガリバー旅行記」に出てくる小人国の名前からの引用、とのことです)を指していて、いずれも認識と事実が異なっていることを前提として説明されているようです。

 

健常者でも起こりうる

このように考えると、ドッペルゲンガー現象は、「意識障害のある状態でのみ発生する、一種の病気のようなもの」と捉えることもできますが、実際にはまったく意識について問題のない健常者にも起こりうる、とのことです。例えば非常に疲れている場合、心労が重なって集中力が低下している場合などにおいて、事実認識を誤ってしまったり、過去の体験などに基づいてバイアスがかかってしまったり、といったことは起こりえます。先に述べたリンカーンや芥川龍之介の例にしても、ひとこと「病気であった」とはいえないところで、人間の脳の事実認識に関するメカニズムの研究が、更なる進化に期待したいところです。

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カテゴリ: その他

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