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龍の子伝説(1)日本昔ばなしの子供は伝説の子供だった

龍の伝説

 

みなさんは、かつて放送されていた「まんが日本昔ばなし」というテレビアニメを憶えていらっしゃるでしょうか。
「まんが日本昔ばなし」のオープニングに使われていた、子供が龍の背に乗って空を飛ぶシーンが、いまでも記憶に残っている方も多いのではないかと思います。

 
このオープニング映像は、松谷みよ子さんの児童文学である「龍の子太郎」をモティーフとしたものだそうです。
そしてその元となったのは、長野県の上田に伝わる「小泉小太郎」という伝説、そして同じく長野県・松本の「泉小太郎」という2つの伝説です。
日本の龍のふるさととも言える信濃の“龍の子伝説”を、ご紹介することにしましょう。

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>>龍の子伝説(2)川を作った龍の子供
 

龍蛇と人間との間に生まれた子供

上田の「小泉小太郎伝説」と松本の「泉小太郎伝説」は、タイトルや主人公の名前は似ていますが内容は異なります。
しかし、その元となる伝説は同じであったと考えられています。
日本各地に残る伝説や民話の多くがそうであるように、ひとつの伝説からいくつかの物語に分かれて行ったということのようですが、「小泉小太郎伝説(泉小太郎伝説)」も信濃の各地に5、6話があるそうです。

 

 

小泉小太郎の方の代表的な伝説

さて、小泉小太郎の方の代表的な伝説はこんな物語です。

 
上田の独鈷山(標高1266m)にあるお寺に若い僧がいましたが、この僧のもとに夜な夜な若い娘が通って来ていました。
不審に思った住職が娘の着物に糸を通した針を刺すように言い、僧がそのようにして翌朝に糸を辿って行くと、産川(うぶがわ)の深い淵の傍らに大きな岩があって、その岩の上で赤子が泣いているのでした。

 
僧が近づいていくと、岩と思ったのは実はとぐろを巻いた大蛇だったのです。
この大蛇は鉄の針を刺されてその毒が身体にまわり、人間の姿になれなくなっていたのでした。

 
大蛇は「どうかこの赤子を育てて下さい」と僧に頼み、淵に沈んで行きました。
しかし僧は怖くなって、赤子を産川に流してしまいます。

 

 

続き:隠れた力が授かっていた龍蛇の子

赤子は産川の下流の小泉村へと流れて行き、そこで村のお婆さんに拾われ、小太郎と名付けられて育てられました。
小太郎はたくましい身体に育ちましたが、遊んでばかりで仕事をしようとしません。
14、5歳になった頃のある日、お婆さんに頼まれて小泉山に薪を取りに行きました。
小太郎は山にある限りの萩の木を集め、束にして持ち帰ります。

 
「これは山じゅうの萩を束ねたものだから、1本ずつ抜いて使い、決して結びをほどいてはいけない」と伝えますが、たった1日で山じゅうの萩を束ねることなどできるはずがないと、お婆さんは結びをほどいてしまいます。
するとその途端、萩の束は膨れ、はぜくり返って家いっぱいになり、お婆さんは押しつぶされて死んでしまいました。

 
このような龍蛇と人間の婚姻は、古事記にある「大物主(おおものぬし/龍蛇神と言われる)」の「三輪山伝説」を代表格として各地に残っています。

 
小泉小太郎伝説の場合は、お婆さんが死んでしまうところで話が終わってしまい、その後に小泉小太郎がどうなったのか気になるところですが、大蛇=龍蛇=神と考える信仰や文化があったのではと思われる信濃の地の伝説ですから、神と人間との間に生まれた不思議な力を持つ少年がいたということかも知れません。

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