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迷子のわたしたちを案内してくれたのは一匹の犬でした。旅先での体験談

不思議体験

 

学生時代に友達と京都に行った時のことです。
友達は京都は初めてで、私は高校時代に修学旅行で来たことがありましたが、京都の地理に詳しくはありませんでした。
その上、方向音痴なので、宿泊させていただく宿坊への道に迷ってしまいました。

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道を尋ねる人もいません

宿坊というのは寺院等の宿泊施設のことで、一般の参拝者や観光客でも予約をして普通の旅館のように泊まれるところもあります。
道に迷っているうちに日が暮れてきてしまい、辺りはほとんど真っ暗になってしまいました。一応、住宅地ではあるものの曲がりくねった細い道や林に面した坂などが多く、街灯も間遠にしかなくて、いかにも寂しい感じです。まったく住民が外にいなくて、道を尋ねることもできませんでした。

宿坊にたどりつけるのか、私たちはだんだん不安になってきてしまいました。今なら携帯から電話をして宿坊に問い合わせればよいようなものですが、当時はまだ、携帯電話もそんなに普及していなかったのです。

 

一匹の犬が・・・

と、急に少し先の小道から首輪をしていない柴犬がひょこりと出てきました。その犬は、こちらをじっと見ると、まるで「こっちについておいで」とでも言うように確信をもった様子で道を歩き始めました。
私と友達は顔を見合わせました。どちらにしても私たちも歩いていた方向でしたから、犬と私たちはしばらく同じ方へと歩いていきました。犬は、撫でさせてくれたりはせずに、私たちの先5メートルほどの距離を保って歩いていきます。私と友達は「この犬についていけば宿坊に着くかもよ」「ただの迷い犬でしょ」「でも案内してくれてるみたいだよ」と、冗談を言い合いました。
そのうちに犬は曲がり角に来ました。すると犬は立ち止ってまた私たちのほうを見て「こっちだよ」と言うような顔をし、道を右に曲がるのです。

 
私と友達は顔を見合わせました。どうせもうさっぱり何が何だかわからないほどに道に迷っていたので、試しについていこうということになりました。私たちがどうするか相談している間、犬はまた立ち止ってこちらを見ているのです。
私たちがついていこうと決めると、犬はまた歩き始めました。そんなふうにして10分ほど歩いたでしょうか。
私たちはふと、行く手に大きな木製の黒い門があることに気がつきました。いつのまにか宿泊する宿坊がある寺のすぐ近くまで来ていたのです。

 

 

姿を消した犬

名前を確認して、私たちは「ここだここだ」「すごい! 犬が案内してくれた!」と喜び合いました。
ふと見ると、犬はいつのまにか姿を消していました。
宿坊はふつうの民宿のような感じで、ご住職の奥さんとお母様と一緒にテーブルを囲んでご飯をいただくという、なんともアットホームな雰囲気でした。私たちが、道に迷って犬についてきたらここまで辿りついたことを話し、もしかしてここのわんちゃんではないですかと尋ねると、犬はお寺で飼っている犬などではないそうで、これまでにそんな話も聞いたことがないとのことでした。でも、「きっと道に迷ったあなたたちのために仏様が遣わしてくれたのね」と、ご住職のお母様はにこにこしていらっしゃいました。

 
翌朝お礼を言って門を出た後、私たちはまたあの犬がいないか探してみましたが、見つけることはできませんでした。
今でも私はあの出来事はただの偶然ではなく、犬は、本当に私たちをお寺まで案内してくれたのだと信じています。

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カテゴリ: 不思議な体験談

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