亡くなった母の気配が濃厚に残っていた。家族で体験した心霊現象
母が亡くなったときのことである。
アルツハイマー型認知症とパーキンソン症候群で、3年半ほど入院していた母だったが、この夏に永眠した。
長くないことはわかっていました
高齢であることもあいまって、数ヶ月前から夜中に呼吸を休止することが度々あると、担当の医師からは告げられており、そう長くないことは想像だにできた。
首都圏に住んでいて、普段は腰の重い兄も、呼ばれたかのように亡くなる前の日から見舞いに来ていた。
生憎と私自身は、仕事の都合で亡くなる直前の日、見舞いには同席できなかったが、毎日欠かさず行っていた父曰く、母はベッドから兄の顔をじっと見つめていたそうである。
そのおよそ12時間後の午前4時ごろに他界したのだが、夜中の12時30分くらいであったろうか、不可解なことが起きた。
拙宅は、2階に父の書斎として使っている8畳間があり、入って右側と左側、それぞれに本棚がある。右側の本棚は、高さが180センチ程度のものである。
私はその時間、そのすぐ隣、東側に位置する部屋でインターネットで動画サイトを見ていた。兄と父はと言えば、既に階下で布団に入っていた。
何かが落ちるような音がします
……!
突如、地震でも、突風が吹いて家が微かに揺れたわけでないのに、何かが落ちるような音がした。
すぐさま、
「何か落としたの?」
と、首だけひねって階下に尋ねると、まだ布団の中で起きていたであろう兄から
「いや、下では何も落ちてない」
との回答が帰ってきた。
不審に思って隣室の照明を点けると、前述の8畳間の真ん中に、100円ショップで売っているような黒のファイルケースと、その傍らには卒業証書を入れるような筒とが落ちていた。あまり見たことがないものが落ちているので、ちょっと怪訝には感じたが、それでも気に留めず、もとにあった場所が不明なので、落ちない場所へと置き直した。
数時間後、母が亡くなり、葬儀の準備で自宅へ戻ったとき、父親に昨晩あった内容を話した。驚いたことに、父が言うには、黒のファイルケースは右側の背の高い本棚の上にあり、筒状のケースは左側の本棚の上から2段目に置いていたとのことで、ますます頭をひねる結果となった。しかも、筒状のケースは、ケースの前に平積みにした数冊の本があり、奥に落ちることは考えられても、手前には落ちてこないはずだというのである。
兄夫婦が帰っていったある日
告別式、百か日の法要が終わり、初七日も過ぎると言うころ、兄夫婦は自宅のある首都圏へと戻っていった。自宅近くの駅に着いたときは既に夕方だったことと、疲弊していたことでラーメン屋へと入った。
案内の店員が
「3名様ですね? ご案内します」
と迎えたと言う。兄夫婦に子供は居ない。しかも、後ろに他のお客が続いていたわけではなかった。
気を取り直し、
「2名です」
と兄は言ったとのことである。
「ヘンだね……」
と、案内された席で義姉と話しているところへ、置かれた水は「3つ」であったと言う。
自分たち以外にどんな人物が居たのかまでは訊けなかったとのことである。