無限の現実世界「パラレルワールド」の概念とは?
人は、今いる空間を生きています。現代科学においては、時間をさかのぼったり、過去や未来を行き来することはできない、とされています。常識的には「人生は一度きり」、「覆水盆に帰らず」、といった言葉のとおり、人の主観や客観的事実、現実世界においては、出来事はあくまでも「ひととおりだけ存在している」、とされています。ところがこの「現実」が、選択パターンによって実は複数あったとしたら、どうなるのでしょうか。「現実」が複数あるという概念は、パラレルワールドと呼ばれています。
ヒュー・エヴェレット3世が提唱
パラレルワールドの起源は、1957年にアメリカの物理学者であるヒュー・エヴェレット3世が提唱した「多世界解釈」である、とされています。ヒュー・エヴェレット3世はアメリカはワシントンD.C.出身で、プリンストン大学で物理学を学び、量子力学の観測問題の観点から多世界解釈を提唱し、量子力学の世界で一躍その名を知られることとなりました(量子力学とは、一般相対性理論と並んで現代物理学の根幹となる概念として知られており、分子や原子レベルのミクロな物理現象を学術的に説明するものです)。多世界解釈とは、「人がとあるタイミングで選択した出来事は重層的に存在していて、選択の数だけ同時並行的に別の世界がある」、といった考え方になります。
枝分かれした無数の世界
つまりパラレルワールドとは、いわば「人の選択によって枝分かれした無数の現実世界」である、といえます。この概念を提唱したのが近年の物理学者であったため、理論的にはパラレルワールドは(可能性としては)存在しうるものである、というのです。しかし、人が選択できる現実は常にひとつだけであるため、パラレルワールドは、多くのSFやファンタジーの世界で取り上げられているにもかかわらず、「存在してもしていなくても、現実世界には永遠に影響しない、理論上だけの概念」として取り扱われるのが一般的な見方となっています。
異次元や霊界とは異なる概念
パラレルワールドが単なる「オカルト的な空想の世界」と一線を画している最大の理由が、「物理学者が提唱し、理論的にありうると考えられるもの」なのですが、こういった観点から、異次元世界や霊界(死後の世界や幽霊といった概念)とはまったく異なっている、といえます。異次元や幽霊が、未来においてもつかみどころのない存在であるかもしれないこととは対照的に、パラレルワールドが実在し、人が主体的に行き来できる時代が、来ないとも限らないのです。