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シュメールの神々アヌンナキの最高神は「風」?超古代の多神教

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人類最古の都市文明とされる「シュメール」。そのシュメール人たちには、地上と冥界を審判し運命を定める「アヌンナキ」という神々がいました。

シュメールの都市文明が現れるのは紀元前3,500年、いまから5,500年もの昔です。超古代ともいえるシュメールは多神教でした。神々のその数は数千柱であるともいわれています。神々には上位神から“小さな神々”と呼ばれる下位神まで、位の違いがありました。

またシュメールは統一されるまで複数の都市国家の集合体であり、それぞれの都市国家には王がいましたが、この王たちは各都市が祀る神から神権を授けられた王であり、つまり地上で人間たちを統治する現人神とされる存在でもありました。

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上位の神から下位の神、そしてその下の神権を授けられた王たち、その最上位にいたのが七大神と呼ばれる7柱の神々であり、その7神が運命を定めるアヌンナキだったのです。

それでは数千柱とされるシュメールの神々、そしてその最上位にいる7柱のアヌンナキのうちで、誰が最高神だったのでしょうか?

 

天地創造を担った古い神々たち

別の記事でも触れましたが、シュメール神話における天地創造の立役者は原初の海の女神ナンム、その子供の兄妹で天空の神アンと地の神キ、そしてアンとキの子供とされる大気を司る神エンリルです。

このうちアンとエンリルが七大神に入っていて、ナンムとキはなぜか入っていません。これも別の記事で触れたのですが、アヌンナキとはシュメールを継いだ後のアッカド人のアッカド語の「アヌンナ」と「キ」をつなげた言葉で、アヌンナはアヌの子供・子孫たちということ。「アヌ」とはシュメール語の「アン」ですから、つまり天空の神アンの子供たち(子孫たち)という意味になり、それに地の神キがつながって「地上に降りた天空の神アンの子供たち」ということになります。

この意味からするとつまり、アンは七大神ではあるがアヌンナキではないということになります。またシュメールの天地創造神話では、エンリルとキが合わさって空気の満ちた地上世界となり、天空はアンが運び去って行ったとされています。

 

アヌンナキの最高位は風の主人エンリル

このことが理由かどうかはわかりませんが、天空の神アンは当初は最高神であったのが、あるときからエンリルがシュメールの、つまりアヌンナキの最高位となりました。

エンリルの名前は、シュメール語の「主人」を表す「エン」と「風」を意味する「リル」をつなげたもので、「風の主人」ということになります。

風はそよ風ばかりでなく嵐や暴風をも表しますから、現代でも台風が脅威なように古代において荒れ狂う風は、人間の力では制御できないものでした。これを司る風の主人エンリルは、神々にとっても人間にとっても畏怖される存在であり、その性格は短気かつ激烈、我が強く破壊をものともしない強大な力の持ち主であり、同時に季節の変化をもたらし恵みを運ぶことによって地上世界のサイクルと秩序を保つ存在でもありました。

 

太陽、月が最高神とはならなかったシュメールの謎

天地創造の立役者であり、兄妹かもしれない親から生まれた子が最高神となるというエピソードは、日本神話のイザナギ、イザナミとその娘で最高神となった天照大神に似ていなくもありません。またエンリルの性格や役割は天照大神とその弟で破壊をものともしない激烈な神である須佐之男命を合わせたような存在にも思われます。

しかしシュメールと日本で大きく異なるのは、日本の最高神が太陽の神であるということです。シュメールの七大神にも太陽の神ウトゥがおり、そして天照と須佐之男に月の神である月読命という兄弟がいたように、月の神ナンナがいます。

しかしシュメールではウトゥが最高神になることはなく、またナンナの地位も決して高いものではありませんでした。一般に自然や動物、そして人間の営みに大きな影響のある太陽や月が最高神となるケースが多いのですが、なぜそうではなくエンリルが最高神となったのか、これはシュメールの神の大きな謎なのです。

エンリルの名前が「風の主人」という意味であるとご紹介しましたが、実はこれもそうではないという説があり、本当のところは名前の意味や表すところも解っていないそうで、アヌンナキのトップはまさに謎の神だということです。

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