> >

超人陰陽師・安倍晴明の不思議エピソード4:式を打ち返す

安倍晴明

ほかの陰陽師が使う式神すらも自由に操ることができる、卓越した能力を持った陰陽師が安倍晴明でした。
そのチカラは「今昔物語集」に、法師陰陽師が2人の少年の姿をした式神で晴明を試そうとし、逆に式神を隠されてしまった話で伝えられていますが、「宇治拾遺物語」には人を殺そうとする別の陰陽師の式神を封じてしまうお話が語られています。

スポンサードリンク

 

 

蔵人の少将の頭上に糞を落としたカラス式神

宇治拾遺物語は今昔物語集の更に後の時代の13世紀、鎌倉時代に成立した説話物語集。安倍晴明の時代からは200年ほどが経っていますが、平安時代を舞台とした多くの不思議な伝説が載せられています。
その中の巻第28には、安倍晴明のこんなお話があります。

 
むかし、安倍晴明が内裏の警護を行う近衛府の詰所に行った折、ある貴族が牛車に乗って内裏に入って行くのが見えました。その人は、まだ若く見目麗しい公達である蔵人の少将です。
しかしその蔵人の少将が牛車を降りて内裏に向かおうとすると、上空を飛び過ぎたカラスが少将の頭に糞を落としたのでした。

 
晴明はこれを見て「あのカラスは式神だ。少将は誰かに式を打たれたのだ」と見抜きました。「式を打つ」とは、陰陽師などが何かの目的を持って術を仕掛けたということです。ちなみに「式」は「使う」という意味ですが、計算式の式と同じで、例えば2という数値の結果を得るための1+1が式、つまり何かの目的を達成するための方程式が「式」です。

 
晴明は「少将には何か前世からの因縁があるのだろうか、気の毒だ」と思い、少将の側に行き「あなたは内裏に参内しようとしていますが、今夜を無事に過ごせないかも知れません。そうなることが見えるので、私にまかせてください。確かめて差し上げますので、さあ参りましょう」と、少将の牛車に乗り込んだのでした。

 

 

式を打ち返してしまう安倍晴明

わなわなと震える少将とともに少将の住まいに戻ると、すでに日が暮れてしまいました。晴明は少将をじっと抱いて身固め(護身の術)を行い、何事かぶつぶつと唱えながら夜通し寝ずに祈祷を行います。すると明け方に戸を叩く者がいるので、晴明は「さあ、誰か人をやって話を聞かせなさい」と人を行かせました。

 
事の真相は、少将の相婿で妻の姉妹の夫である蔵人の五位がこの妻の家に同じく住んでいて、少将の方は良い婿であると大切にされ、蔵人の五位は反対にないがしろにされているというので、少将を怨んでいたのです。そこで蔵人の五位は陰陽師を使い、式を打たせたのでした。ちなみに、蔵人の五位とは蔵人の職を失った五位の位の人で、同じ五位の位を持ち役職に就いていた蔵人の少将とはだいぶ立場が違います。

 
少将は式を打たれて殺されてしまう筈でしたが、それを晴明が見つけて一晩中祈祷をしたために、その式を打った陰陽師から使いがやってきたのです。その者は「心が迷うままに、強く護られている少将を式神で狙わせてしまいましたが、その式神が戻って来て逆に私が殺されようとしています。してはいけないことをしてしまいました」と、その陰陽師の言葉を伝えて来ました。

 
「これをお聞きなさい。夕べ私があなたを見つけなければ、このようになっていたのです」と晴明は少将に言うと、人をその使いの者につけて様子を見に行かせると、陰陽師は間もなく死んだということでした。
少将の舅は蔵人の五位をすぐに追い出し、晴明には涙を流して喜び感謝をしたのだそうです。この少将が誰かはわかりませんが、のちに大納言にまでなったといいます。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

Comments are closed.