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超人陰陽師・安倍晴明の不思議エピソード2:力を試される

安倍晴明

陰陽師・安倍晴明が活躍した平安時代中期の後の時代、古今の不思議な出来事のお話を集めた説話物語集の傑作が世に出ます。それら「今昔物語集」や「古今著聞集」「宇治拾遺物語」には、希代の陰陽師・安倍晴明の話が収められていて、伝説とは言え晴明の超人ぶりを垣間見ることができます。
今回はそんな説話物語集のなかから、今昔物語集に書かれた晴明の不思議な伝説をご紹介しましょう。

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安倍晴明のチカラを試そうとやって来た法師陰陽師

今昔物語集は平安時代末期に成立したとされていますから、安倍晴明が活躍した時代からおよそ100年ほど後の時代に書かれました。晴明は生きていたときから既に伝説化された陰陽師だったようですが、この頃には本当に伝説の人物になっていたのだと思われます。

 
今昔物語集に登場する安倍晴明の少年・青年時代のエピソードは別の記事でご紹介しましたが、そこには若くして鬼や妖怪の姿を見ることのできる「見鬼の才」を持った晴明の能力が記されていました。
そのお話が載っている今昔物語集の巻24の第16話に、続けてこんな伝説が語られています。

 
安倍晴明の師匠である「賀茂忠行」が亡くなった後のことです。ある日、晴明の家にひとりの年老いた法師陰陽師(ほっしおんみょうじ)が尋ねて来ました。法師陰陽師とは、朝廷の官人陰陽師と違って僧侶でありながら陰陽師となり、民間で占いや祈祷を行う、言ってみれば非正規の陰陽師です。
この法師陰陽師が、お供に2人の10歳ぐらいの少年を連れています。晴明が「あなたはどこから来た、どなたですか」と聞くと、老人は「播磨国(兵庫県)の者で陰陽道を学んでいます。晴明先生が特に優れた力を持っていると聞き、教えを請うために来ました」と言います。
晴明は「そうは言っているが、この法師はかなりの実力を持っているようだ。おそらく私の力を試すために来たのに違いない。試される前にこちらから試してやろう」と心の内で思いました。

 

 

安倍晴明、法師陰陽師の式神を隠してしまう

そこで袖の中に両手を入れ、指を組み合せて印を結び、密かに呪文を唱えました。晴明は、法師陰陽師の老人が供に連れて来た2人の少年が「式神」だと見抜き、隠してしまおうと思ったのです。式神については、また別の機会に詳しく紹介しようと思いますが、陰陽師が使役する人間ではない霊的存在です。

 
そうしておいて晴明は、「私に教えを受けたいというのはわかりましたが、今日はこれから用事があって時間がないので、後日あらためてお越しください」と言いました。
法師陰陽師は感謝して立ち去りましたが、100、200メートルほど行ってまた戻って来ます。晴明がその様子を見ていると、人が隠れていそうなところを覗き込むなど、誰かを探すようにしながら晴明の前に来てこう言います。
「晴明先生、どうか2人の子どもを返してもらえませんか」
「どうして私が、あなたから子どもを取り上げねばならぬのだ」と知らぬふりをして言うと、「どうか赦してください」と法師陰陽師の老人は謝りました。晴明は「わかった。私はあなたがこの晴明を試そうと、式神を連れて来たのが気に食わなかっただけなのだ。他の者には通用しても、この私には通じないよ」と呪文を唱えると、しばらくして2人の子どもが走り寄って来ました。

 
それを見た法師陰陽師は、「先生の実力を試してみようと思ったのですが、私の負けです。式神を操るのは簡単でも、人の使っている式神を隠すことは普通できません。それができるのは本当に素晴らしい。どうかただ今から弟子にしてください」と、その場で弟子になる証しである名符(みょうぶ:身分証明に師匠に差し出す名札)を書いて、晴明に差し出したのでした。

 
このように今昔物語集に語られる安倍晴明の話は、派手さはないものの、陰陽師の中でも比類のない能力を示す興味深いエピソードでした。

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