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土の中や岩穴に棲む土の精霊グノームとは

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16世紀のスイス出身の錬金術師であり医師、化学者あるいは神秘思想家のパラケルスス(テオフラストゥス・ホーエンハイム)は、古代ギリシャ哲学から伝わる「四大元素」である火、水、空気(風)、土のそれぞれを司るエレメンタル、つまり精霊として、火には「サラマンダー」、水には「ウンディーネ」、空気または風には「シルフ(シルフィード)」、土または大地には「グノーム(ノーム)」という「四大精霊」が存在するとしました。

このうち土の精霊グノームという名称は、空気と風の精霊シルフと同じようにそれ以前にはなかった名前のようですから、パラケルススが造り出したものであると考えられています。

それではパラケルススが考えたグノームとは、どんな精霊だったのでしょうか。

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土の精霊グノームの別名はピグミー??

パラケルススは土の精霊グノームを、またの名を「ピグミー」と呼びました。ピグミーと言えばアフリカ赤道地帯の熱帯雨林に暮らす「ピグミー族」のことですが、その存在や名称は古代エジプトのヒエログラフに書かれた小人族についての記録や、古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスの叙事詩「イーリアス」に出て来る小人族の「ピュグマイオイ」、アリストテレスの「動物誌」に記述された穴居生活をする小人族の人びとに由来しているとされます。

これらピグミーという名称につながる小人族や穴居生活をする人びとについては、ヨーロッパでは古くから知られており、ルネサンス期以降もその実在性についての論争もあったのだとか。パラケルススの時代の16世紀でも、まだアフリカに暮らす実際のピグミー族の情報は知られていなかったようで、実在が知られ始めるのは17世紀以降だそうです。

つまりパラケルススは、土の中に棲む土の精霊の別名として、古代から伝わる穴居生活をするとされた小人族の名前を用いたのかも知れません。

 

グノームは高い知性をもった小人精霊

さてパラケルススによれば、土の精霊グノームは土のエレメント(元素)でできた小人で、岩塊や大地の洞穴のなかに棲み、岩や石の壁でも土の中でも人間が空気の中を歩くように通り抜けて進むことができるとしています。

一般にグノームは身長が10センチから15センチくらいの小人で、その外見は老人のように見え三角帽子(フリジア帽)を被って描かれることが多いようです。知性はとても高く、北欧神話やヨーロッパの民間伝承に登場する小人の妖精族「ドワーフ」と同じように高度な工芸品を作る能力があるとされています。

このように知性の高いグノーム(Gnome)の名称は、ラテン語の「gnomus」が英語になったもので、ギリシャ語の「知恵(gnosis)」と関連するという説もありますが、実際にはピグミーと同様「地下に棲むもの(genomos)」から来た言葉だとのことです。

 

グノームは人間嫌い!?

しかし知性は高いのですが、水の精霊ウンディーネや空気と風の精霊シルフが人間に好意を持ちやすい性質を持っているのに反して、グノームは火の精霊サラマンダーとともにたいていは人間に悪意を抱いているのだそうです。

ですが魔術師が説き伏せればグノームをしもべとすることは可能で、精霊たちは心優しく誠実で純粋無垢な人間を好むことから、グノームも契約や誓約を交わした相手ならば充分な知識と富みを与えてくれます。グノームは人間の心と思考を読むことができる能力を持っており、その人間の性質をすぐに見破ることから、良い人間と認められればグノームを誓約相手として誘うことができるそうです。

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