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トロイア戦争勃発!ケイローンとアキレウスの物語

オリンピアのゼウス像
 
半人半馬の「ケンタウロス族」の賢者「ケイローン」には、ギリシャ神話の2人の英雄「アキレウス(アキレス)」と「ヘラクレス」に関わる物語もあります。

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変身する女神テティスを捕まえる知恵を授けたケイローン

テティスという美しい海の女神がいました。テティスは、海神のネーレウスと女神ドーリスの間に生まれた50人の娘たちネーレーイデスのひとりで、最高神のゼウスと海神のポセイドーンの双方から妻にと望まれました。

しかし、法と掟の女神であるテミスから、テティスとの間に子をなすと父より優れた子供になってしまうという託宣を受け、どちらの神もテティスをあきらめます。

その後テティスはゼウスの不興を買ってしまい、プティーアの王のペーレウスと結婚させられることになってしまいました。プティーアというのはテッサリア地方の最南部の土地で、戦士の民族であるミュルミドーン人の故地です。

このペーレウスとの結婚を嫌ったテティスは、様々に自分の姿を変えて逃げようとしました。しかしこのテティスの捕まえ方の知恵をペーレウスに授けたのが、ケンタウロスの賢者ケイローンだったのです。

 

トロイア戦争の遠因となったペーレウスとテティスの結婚式

ケイローンはペーレウスに、テティスが次々とどんな姿に変わっても決して手を離してはいけない、と教えました。そこでペーレウスは、テティスが火になっても水になっても獣の姿になっても、もとのすがたに戻るまで手を離しませんでした。

こうしてペーレウスはテティスを逃すことなく手に入れ、結婚することとなります。結婚の宴席には神々とともにケイローンも招かれ、「トネリコの槍」を祝福に贈ったといいます。この宴席にはすべての神々が招かれていましたが、争いの神エリスだけは招かれませんでした。ケンタウロス族とラピテース族の争いの場になった、ラピテース族の王ペイリトオスの婚礼にも争いの神エリスは招かれていませんが、ここでも同じです。

 

トロイア戦争の発端とは

これに怒ったエリスは宴席に乗り込み、「最も美しい女神にこれを与える」と言って黄金の林檎を投げ入れました。これをめぐって、女神のヘーラー、アフロディーテ、アテーナーが争い、ゼウスは仲裁してトロイア王プリアモスの息子の羊飼いパリスに判定させるとしました。

3人の女神の誘惑や買収にも関わらず、結局はアフロディーテが最も美しい女神とパリスに判定されます。アフロディーテがパリスを買収する際に約束したのが、最も美しい人間の女性を与えるということだったからで、ヘーラーが約束した世界を支配する力、アテーナーが約束した戦争に勝利する力よりも、若いパリスは美しい女性との愛を選んだのでした。

このとき、最も美しい人間の女性とされていたのは、スパルタの王メネラーオスの妃であるヘレネーでした。女神アフロディーテの約束によって、パリスはヘレネーを奪い去ってしまいます。そしてこの出来事が発端となって、古代ギリシャ世界を揺るがすトロイア戦争が起こるのです。

 

不死身の英雄となったペーレウスとテティスの息子アキレウス

さて、結婚したペーレウスとテティスとの間に生まれたのが、ギリシャの英雄のひとりアキレウスです。

母のテティスは息子のアキレウスを不死の身体にするために、冥府を流れる川であるステュクス水にわが子を浸しました。この川の力によってアキレウスは不死身となりますが、水に浸すときにテティスがアキレウスのかかとを掴んでいたために、ここの部分だけが不死身とはなりませんでした。

テティスがアキレウスを養育しようとしなかったので、父親のペーレウスはアキレウスをケンタウロスの賢者ケイローンに預け、アキレウスはケイローンのもとで学びながら育ちました。

やがてトロイア戦争が始まるとアキレウスは、ペーレウスとテティスの結婚のときにケイローンから贈られた「トネリコの槍」を手に、ミュルミドーン人の戦士を率いて参戦します。しかしアキレウスは、トロイア戦争を起こしたパリスの放った矢に唯一不死身ではないかかとの部分を射られ、死に至ることになるのです。そしてこれが、後世に「アキレス腱」の語源となったのでした。

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