ギリシャ神話の半人半獣種族、ケンタウロスとは?
ファンタジーものの映画やアニメ、ゲームなどでおなじみの、上半身は人間で下半身が馬の種族「ケンタウロス」をみなさんはご存知でしょうか。
ヨーロッパに行くとケンタウロスの像がある公園や広場もありますし、絵画では15世紀ルネサンス期のボティッチェリの「パラスとケンタウロス」をはじめとして、様々にケンタウロスの姿が描かれています。
勇猛な種族として、ほとんど男性の姿で描かれることの多いケンタウロスですが、イタリア・シチリア州のタオルミーナの町の大聖堂(ドゥオモ)前の広場には「女ケンタウロス」の像があるそうです。そういえば、ケンタウロスの英語読みである「セントール」をタイトルに入れた日本のマンガ・アニメ作品にも、女性のケンタウロスが主人公として登場しますね。
射手座はケンタウロスの星座
ケンタウロスは宇宙に浮かぶ十二星座のうちのひとつにもあり、星座占いでもポピュラーな星座、つまり「射手座」です。射手座は占星術では「人馬宮」とも言い、まさに半人半馬のケンタウロスのこと。星をつないで描かれるその姿は、弓に矢をつがえてまさに放とうとするケンタウロスであり、勇猛で狩りや戦いに長けたイメージを表しています。
十二星座がそれぞれギリシャ神話をもとにしている通り、ケンタウロスという半人半獣の種族もギリシャ神話から生まれたものであるとされています。
ギリシャ神話のなかのケンタウロスの物語は、またあらためて詳しく探っていきたいと思いますが、古代ギリシャで描かれたケンタウロスの姿について少し見てみることにしましょう。
古代ギリシャのケンタウロスの姿は、どうも今とは違う!?
一般的によく知られているケンタウロスは、四本足の馬の胴体に人間のお腹から上の上半身がある、という姿です。しかし、古代ギリシャのケンタウロス像はどうも違っていたようです。
例えば、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する「ケンタウロスを退治するヘラクレス」というブロンズ像では、全身が人間の背中の腰の上あたりから馬の胴体の半分くらいと下半身がつながっています。つまり前足は人間の足で、後ろ足は馬というわけです。
このブロンズ像は紀元前750年から700年頃のものだそうで、オリンピック発祥の地とされるギリシャのオリンピュアから出土されました。
これ以外にも、紀元前の時代の像や絵画のケンタウロスは同じような姿をしていて、おまけに人間の部分の全身、つまり頭から前足までは人間の姿で丸裸ですから、どうも勇猛な半人半馬のケンタウロスというイメージとはちょっと違うようにも思われます。
強い性欲を強調して描かれた?古代のケンタウロス
ベルリン国立ミュージアム所蔵の紀元130年から138年頃の「ケンタウロスと猛獣」というモザイク画に描かれたケンタウロスは、現在わたしたちが持つイメージとほとんど同じ、お腹から上が人間で胴体と四つ足が馬の姿ですから、紀元前から紀元後に移り変わって行く間にケンタウロスの姿も変化して行ったのかも知れません。
人間の全身の姿をほぼ露出している古代のケンタウロスの姿は、この種族が持つという強い性欲をより強調していたからだという説もありますが、さてどうなのでしょうか。ケンタウロス族の特徴や性質については、また別の記事でご紹介することにしましょう。