ラグナロクを引き起こした火の神ロキ
北欧神話の最終戦争として、現代のゲームやアニメなどのもチームに使われることの多いラグナロク(北欧神話の最終戦争で、別名「神々の黄昏」ともいわれています)ですが、もともとのきっかけは、北欧神話の主神といわれる「戦争と死の神」、オーディンの息子であるバルドルが、神の一族と相対することになる、巨人族の血を引くロキという神に殺害される、という事件でした。
北欧神話の序盤においては、ロキは争いの中心ではなく、悪戯好きの神として、それほど大きな悪としては描かれていなかったようです。
「閉ざす者」という意味を持つロキ
ロキという神は、北欧神話が書かれているという古ノルド語においては、「閉ざす者」、「終わらせる者」という意味を持ちます。
北欧神話が13世紀に文書化されて以降、長い時間をかけて、(後付けを含めて)さまざまな意味を持つに至るまでの経緯の中で、ロキの性格付けも微妙に変化していったもの、と思われますので、ロキという名称も、後年定着したのかもしれません。
ロキは、巨人族の血を引いていて、神々の一族とは、最終戦争を引き起こすまでにこじれてしまう一族の出なのですが、北欧神話の序盤においては、のちに殺害することになる、バルドルの父であるオーディンと義兄弟となっていて、オーディンと同じアースガルズという場所に住んでいた、と伝えられています。
男神であるが女神にも変身する
ロキの特徴として、変身を得意としていた、と描かれています。
本来は男神なのですが、時として女神に変身したり、さらには自分自身ではなく、周囲の神々をも、呪文をもって変身させる能力を持っていたようです。
性格としては、邪悪であるとか狡猾であるとかいった、神としてはあまりふさわしくないキャラクター付けがなされています(嘘つきや気まぐれといった、非常に人間的な側面も備えていました)が、神としてのロキのもともとの姿は、「火の神」であった、とされています。
19世紀のドイツの歌劇家であるリヒャルト・ワーグナーの作品である「ニーベルングの指環」では、火の神としてのロキがモデルとなっています。
アースガルズに住んではいたもの、その性格から、厄介ごとを多数発生させていたようで、北欧神話の序盤から中盤、そしてラグナロクが描かれる終盤にかけて、邪悪な側面が強調されるようになっていきます。
このあたりは、後に北欧全域に広まることになる、キリスト教におけるサタン(=悪魔)のキャラクターが、少なからず重ねられている、といえそうです。