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まるで島!超巨大怪物・海亀ザラタンと蛇海亀アスピドケロン

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海の巨大怪物「クラーケン」の伝承には、島のような巨大さ、あるいは多数の小島が集まったようにも見えたというようなものがあります。まさに地球上で最大の海の怪物ということのようですが、クラーケンと同じように島と見紛う海の巨大怪物の伝承がほかにもあるのです。

クラーケンの伝承のもとのひとつになったと考えられている、アイスランドの「伝説のサガ」に登場する怪物「ハーヴグーヴァ」と「リンギバク」や、また古代のギリシャ神話に伝わる「ケートス」と呼ばれる海の怪物は、巨大なクジラであると表現されていますが、一方でこちらは巨大な海亀。クラーケンに代表される海の巨大怪物伝説の大もとには、クジラとは別に海亀というのもあったのでしょうか。

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イスラム世界に伝わる超巨大海亀

アイスランドの「伝説のサガ」がまとめられたと思われるのは、12世紀から13世紀のこと。その同じ頃、13世紀のペルシア人の医師で天文学者、地理学者のザカリーヤー・アル=カズウィーニーという人が、その著書『創造物の驚異』で「ザラタン」という海の巨大怪物について書いているそうです。

『創造物の驚異』は中世イスラム世界の宇宙論ともいうべき書物ということで、神による天地創造の話から始まり、「神は人間の知らない多くのものを創造した」としています。そのなかで記された「ザラタン」とは、島と見間違えるような超巨大な海亀です。

ザカリーヤー・アル=カズウィーニーによると、このザラタンに船乗りたちが草木の茂る島と間違えて上陸し焚き火をしていると、その熱でザラタンが目を覚ましたというほどなのだそうです。

こういった超巨大海亀の伝承は世界中で語られていたようですが、ザラタンについては9世紀のアラブ、バスラ(イラク)の文学者であるアル・ジャーヒズが、350種類以上の動物について記した百科事典ともいえる『動物の書』という著作で触れています。ザラタンを採り上げた書物はこれが初めてのものと言われていますが、アル・ジャーヒズはザラタンを荒唐無稽な作り話としているそうです。

 

ヨーロッパ世界の超巨大蛇海亀アスピドケロン

島と見紛うほどの巨大な海亀の怪物としては、「アスピドケロン」というものもあります。ギリシャ語で「アスピ」とはエジプトコブラのことで、「ケロン」とは海亀のこと。つまり「蛇亀」ということで、まるで東洋の「玄武」のようでもあります。ちなみに日本のキトラ古墳の壁画にも描かれている玄武とは、巨大な亀に蛇が絡まった姿でまさに蛇亀なのです。

このアスピドケロンには、ザラタンと同じように島と間違って船乗りたちが上陸し、焚き火をしたところその熱さでアスピドケロンが目を覚まし、海中に潜ったために船乗りたちはみな溺れ死んでしまった、という伝承があります。ザラタンもアスピドケロンも呼び名が異なるだけで同じものだったのでしょうか。似たような伝承は、グリーンランドのイヌイットにも「イマップ・ウマソウサ」という呼び名で伝わっています。

超巨大蛇亀アスピドケロンの伝承は、やがて超巨大クジラの伝承と混ざっていき、その姿はクジラや魚のようでもあるともされていきました。旧約聖書の「ヨナ書」の大きな魚の腹の中に3日3晩いたヨナの話は古代のものですが、同じように巨大な魚やクジラに飲み込まれる18世紀の『ミュンヒハウゼン男爵(ほら吹き男爵)の冒険』や19世紀の『ピノキオの冒険』は、このアスピドケロンの伝承が大きく影響しているようです。

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