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フランケンシュタインと錬金術で作り出されるホムンクルス

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小説『フランケンシュタインの怪物』で怪物を造り出したヴィクター・フランケンシュタインは、科学者となる以前の子供の頃から「錬金術」に没頭していました。彼は16世紀ドイツのコルネリウス・アグリッパ、同じくスイスのパラケルスス、13世紀ドイツのアルベルトゥス・マグヌスといった著名な錬金術師たちの著作を密かに読んで、「賢者の石」や「生命の霊薬(エリクサー)」の研究を行っています。

1818年に出版された小説の主人公として、18世紀後半から19世紀初めの世界に生きるヴィクターは、やがて生物学や電気科学、数学に魅せられた近代科学者になっていくわけですが、それでも彼のベースには錬金術などのオカルト科学が表裏一体となっていて、それが怪物=人造人間を造り出そうとする行動につながって行ったのでした。

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人造人間・ホムンクルスの造り方

フランケンシュタインの物語よりも遥か以前に、それでは錬金術師たちは人造人間を造り出していたのでしょうか。

錬金術の世界では「ホムンクルス」というものがあります。これは錬金術師が考えていた人造人間のことで、例えばヴィクター・フランケンシュタインも読んだという16世紀のパラケルススの著作には、ホムンクルスの造り方がこう書かれているそうです。

蒸留機に人間の精液を入れ40日間密閉して腐敗させると、人間のかたちをした透明なものが現れます。これに人間の血液を与えて、馬の胎内と同じ温度で40週間保存すると小さな人間の子供=ホムンクルスができあがるというのです。

それ以外にも、クリスタルの容器の中に三日月の夜の夜露と男性の血液を入れて、密閉して1ヶ月保存後に上澄みを取り、動物から採った抽出液を加えてできた赤い沈殿物をゆっくりと加熱してまた1ヶ月保存すると、その赤い沈殿物は内蔵となり血液と神経が生成され、そこに以前に取っておいた上澄みを加えると、男女のホムンクルスができるという説もあります。

パラケルススは造り出すことに唯一成功したとされていますが、ホムンクルスは生まれながらに知識を身につけた存在で、現在で言えばクローン人間といったものだったのかも知れません。

 

世界初のアンドロイドは13世紀に製作された!?

一方、パラケルススよりも昔の13世紀ドイツのアルベルトゥス・マグヌスには、20年もの歳月を費やして完璧な「オートマタ(自動人形)」を造ったという話があります。

機械人形としてのオートマタの歴史は古いのですが、神学者で錬金術師であり当時では随一の科学者でもあったアルベルトゥス・マグヌスが製作したオートマタは、自ら歩くことができ、人間と会話して召使いとして雑用をこなすこともできたといいます。

18世紀の百科事典「サイクロペディア」には、今日でも人造人間ことを言う「アンドロイド」の項目で、「アンドロイドはオートマタのこと」であり「アルベルトゥス・マグヌスはアンドロイドを作ったと記録されている」という記述があるそうで、まさに現代的な意味での人造人間を製作したということでしょうか。

このマグヌスのオートマタは、ある日尋ねて来た弟子の神学者トマス・アクィナスと会話をしている途中で、トマス・アクィナスをひどく怒らせてしまい、終にはハンマーで叩き壊されてしまったのだとか。なんだか、アンドロイドが登場する現代の映画の1シーンのようです。

小説『フランケンシュタインの怪物』のなかで主人公のヴィクター・フランケンシュタインは、これら錬金術師たちの著作を読んで学んでいるのですから、当然に過去の人造人間の製作について知っていたわけで、そこからヒントを得て自らも人造人間を造り出そうとしたのでしょうか。

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