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実は読書家?!フランケンシュタインの怪物が読んだ3冊の本

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別の記事でご紹介しましたが、イギリス人女性のメアリー・シェリーが書いた小説『フランケンシュタインの怪物』の怪物は、自分を造り出したヴィクター・フランケンシュタインから見放され、彷徨い歩くなかで人間の言葉を学びます。そして道端に落ちていた旅行鞄を拾い、そのなかに入っていた3冊の本を読むのです。

その3冊の本とは、イギリスの詩人ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』、ローマ帝国のプルタルコスが書いた伝記『プルターク英雄伝』、ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』だったのですが、それではこの3冊がなぜ選ばれ、そこにはどういう意味があるのでしょうか。

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神によって創造され、知恵を得ることで楽園を追放された人間

まずミルトンの『失楽園』ですが、この叙事詩は旧約聖書の「創世記」をもとに17世紀に書かれたものです。
神によって創造された人間アダムとそのアダムの肋骨から造られた妻のイヴが、幸福に暮らす楽園であるエデンから、堕天使で悪魔のルシファーの策謀によって追放されるという物語が中心になっています。

天上界で堕天使・悪魔の軍勢と天使の軍勢が戦い、敗れたルシファーは天上界の代りに楽園を手に入れようとエデンに侵入します。そして蛇の姿となってイヴに近づき唆して「知恵の実」を食べさせ、イヴはそれをアダムにも食べさせるのです。その罪によって死を運命づけられた人間は楽園を追放されてしまいます。

神に創造されながらも、知恵を得ることによって罪を犯し死ぬ存在となって楽園を失う人間。神ならぬ人間によって造られた怪物もまた知恵を得て、後には人間を憎み復讐しようとします。

 

古代の英雄たちの言動を学ぶ怪物

次のプルタルコスの『プルターク英雄伝』は、古代ギリシャ・ローマの英雄たちを2人ひと組でセットにして対比させながら語る伝記で、「対比列伝」とも呼ばれています。登場人物は50人にも及び、シェイクスピアはこの英雄伝に基づいてそのなかから「ジュリアス・シーザー」や「アントニーとクレオパトラ」などの戯曲を書きました。

フランケンシュタインの怪物がこれら古代の英雄たちの伝記を読んで、いったい何を感じ理解したのでしょうか。そこでは社会のなかで生きる人間というものの存在を、様々な英雄たちの言動を通じて知ったのかも知れません。

 

苦悩する人間という存在を知る怪物

そして、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』です。

主人公のウェルテルは婚約者のいる女性シャルロッテと知り合い、幸せな日々を過ごしますが、シャルロッテの婚約者が登場することによって苦悩に苛まれ、耐えきれなくなってこの土地を去ってしまいます。

やがてもとの土地に戻り、既に結婚していたシャルロッテへの想いに再び悩みますが、ウェルテルの知人の作男が自分の主人である未亡人を想うあまり殺してしまう事件が起き、その作男と自分自身とを重ね合わせて擁護し、それがシャルロッテの父親である老法官にはねつけられたのをきっかけに、ついには自殺してしまうという物語です。

フランケンシュタインの怪物はこの物語を読むことによって、人間の異性への想いや苦悩といった感情、自分では解決し得ない状況があることや自殺という極限的な行為を知ったのでしょうか。やがて苦悩する怪物は、殺人と自殺へと導かれて行ってしまうのです。

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