ヴァンパイアVSヴァンパイア・ハンター
吸血鬼といえば、高い知性を持ったアン・デッド(不死の者)で貴族然とした美しい容姿を持ち、強力なパワーと魔術を駆使する最強クラスの魔人、妖魔として描かれることが多いかと思います。たしかにヴァンパイアは強いのですが、じつは多くの弱点を持っていることをご存知でしょうか?
ヴァンパイアの特徴とは?
吸血鬼の特徴としては、まずあたりまえですが人間の血を吸います。これは血を吸う=精気や生命力を吸うということで、「エナジー・ドレイン」と呼ばれる能力が最大の特徴です。そして、アン・デッドとして物質的な制約を持たないことから、計り知れない腕力を発揮しますが、血液=精気が不足するとそのパワーも減少します。
そのほか、狼やコウモリ、ときには霧に変身する能力を持ち、鏡には映らないとされています。ちなみに多くの吸血鬼伝承ではじつは鏡に映るのですが、ドイツ文化圏の伝承で魂を持たないヴァンパイアは魂を映し出す鏡に映らないとされたことから、その説を採用した後世の映画などで一般化されたとのことだそうです。
ヴァンパイアの弱点はたくさんある
吸血鬼の弱点をご紹介します。
日光に弱い
吸血鬼の弱点としては、まず日光に弱い。しかしこれは日光を嫌うだけで、太陽光線を浴びても死ぬことはありません。実際に多くの伝承でも、昼間にヴァンパイアがうろつきます。
ニンニクに弱い
これは古代エジプトの時代より、ニンニクは万病に効く薬と考えられていたことから魔物除けとされていたからで、また古代ローマの兵士は勇気を奮い立たせるために、ニンニクを口に含んだり身につけたりしたそうです。
清い水に弱い
聖水をはじめとした清い水は悪魔や魔女、魔物に対抗するシンボルとされており、ギリシャの伝承ではヴァンパイアを海に囲まれた無人の孤島に島流しすれば、泳いで脱出はできないと考えられていました。
銀に弱い
銀は、悪魔や魔物に対抗する物質と考えられていました。ヴァンパイアに対抗するものとして、純銀で作られた十字架や銀の弾丸が一般的ですが、セルビアの伝承では十字架が描かれた銀の硬貨を溶かして弾丸にするのが、最も効果的とされていました。
塩に弱い
塩は古代から、純潔と善の象徴とされていました。日本でも古来より清めには塩が用いられますが、これは世界共通のことであったようです。ルーマニアでは、生まれてくる子がヴァンパイアにならないように、妊娠中の女性に塩を食べさせる習慣があったのだとか。また、柩のなかに塩を入れることで悪霊の侵入を防ぐという習慣もあります。
ケシや雑穀にも弱い?
そのほか吸血鬼を除けるために、墓のまわりや墓から自宅までの間にケシや雑穀の種を撒くというのもあります。これはヴァンパイアが、1年にひと粒ずつ種を集めて数をかぞえる習性があるからだそうですが、おそらく低級の吸血鬼なのかも知れません。
吸血鬼に対抗するヴァンパイア・ハンターの伝承
このように吸血鬼に多くの弱点があるのは、様々な魔物や怪物の伝承が集まって吸血鬼の伝承になって行ったから、複数の魔物の弱点も集まってしまったという説があります。また魔術師や魔女と吸血鬼が融合されて、聖なるものが弱点化して行ったということももちろんあります。
このような吸血鬼の弱点を利用してヴァンパイアに対抗する、ヴァンパイア・ハンターという存在も生まれました。ヴァンパイア・ハンターの伝承も古くからあって、例えば東欧やロシアの伝説に登場する「ダムピール」は、吸血鬼と人間との間に生まれた混血の者です。
ダムピールは吸血鬼を探知したり殺す能力を持っており、ヴァンパイア・ハンターを職業とすることもあると言われています。この吸血鬼と人間との混血のヴァンパイア・ハンターは、現代に創作された物語に登場することもありますが、そのもとはダムピールというわけです。
そのほか、ツルナ・ゴーラ(モンテネグロ)やヘルツェゴビナの伝承に伝わる「ヴィエドゴニャ」は、赤い羊膜を付けて生まれた子でヴァンパイア・ハンターの能力を持っていますが、死ぬとヴァンパイアになる危険性もあるとされています。
一方、白い羊膜を付けて生まれた「ズドゥハチ」は、土着の豊穣の守護霊が人間として生まれヴァンパイア・ハンターになるとされているそうです。
はたして現代でも、どこかでヴァンパイアとヴァンパイア・ハンターの戦いが続いているのでしょうか。