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吸血鬼の起源と伝承(2)冥界の女神ヘカテと魔女とヴァンパイア

吸血鬼

古代ギリシャの「冥界の女神ヘカテ」は月の女神であり、豊穣や出産、浄めや贖罪を司りました。そして吸血鬼の起源にとって重要なのが、ヘカテは魔術や妖術を守護し、血を要求する神でもあったからです。
吸血鬼が登場する現代の様々な物語でも、ヴァンパイアと魔術や妖術は切っても切れない間柄にありますが、この大もとは女神ヘカテに求めることができるようです。

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夜を支配する女神ヘカテ

そもそもヘカテは、ギリシャ神話の主神ゼウスをはじめとしたオリンポスの神々に先行する、古い神々の一族「ティターン(タイタン)」に属する神です。ティターン族は巨人の神族で、現代でも英語で「タイタン」と言えば巨人や巨大なものを表しています。

古代のギリシャやローマでは、ヘカテは同じく月の女神である「セレーネ」と「ディアナ」と共に三位一体の神として崇められ、また同じ月の女神である「アルテミス」の従姉妹とされています。しかし、アルテミスが狩猟と貞潔の女神でもあり、ギリシャ神話の三大処女神のひとりと数えられているのに対して、ヘカテは闇夜を支配するとても怖い女神なのです。
夜になるとヘカテは、地獄の番犬であるケルベロスや血をすする女性の姿の怪物エンプーサ、同じく女吸血鬼のモルモーなどを従えて地上を彷徨い、人間に悪夢と狂気を引き起こすと言われています。

 

 

女神ヘカテは魔術師や魔女たちに信奉された

このような、いわば世界のうちのダークサイドを司り魔術や妖術を守護する神ですから、ヘカテは古代から魔術師や魔女が信奉する女神でもあったのです。別の記事でご紹介した古代ギリシャの吸血の巫女と呼ばれる「テッサリアの巫女」も、ヘカテに仕え魔術的な儀式を行う巫女たちでした。

2世紀の古代ローマの弁論家で作家のルキウス・アプレイウスは、「黄金のロバ」という作品のなかでモロエとパンティアという名前の魔女の姉妹が、主人公であるソクラテスの血を吸うという物語を書きました。このように、古代ローマの時代から魔女と吸血鬼が同一視されていたようで、密接な関係にあったことがわかります。

魔術師や魔女たちは女神ヘカテに守護を求め、ヘカテは生命の根源と考えられた血液を要求する神ですから、ヘカテを祀る儀式に血の供物を用いるようになりました。

 

 

魔術師や魔女と吸血鬼との関係性

古代世界では、魔術師や魔女という存在は薬を作って病人を癒したり、農作に大きな影響をもたらす天候を占い豊作を願ったりと、医療や呪術を行うシャーマンとして古代社会に必要なものでした。古代のギリシャやエジプトでは、神殿に仕える巫女たちがこのような薬草や気象などについての知識を学んでいたとされます。

ヨーロッパの魔術師や魔女は、こういった神殿巫女やケルトなどの古代部族のシャーマンにその起源が求められるかと思いますが、やがて中世になると神に背いて邪悪な神を崇め悪魔との契約を行った者として、死ぬと吸血鬼になると信じられるようになります。

つまり魔術師や魔女あるいは魔術や妖術というものは、冥界の女神ヘカテへの信奉をバックボーンとして吸血鬼と絡み合い、より怖れられ忌むべき存在となって行ったのです。

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