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吸血鬼の起源と伝承(1)ヴァンパイアはどうして生まれたのか

吸血鬼

いまでもなお「吸血鬼」が主役の映画がヒットし、ライトノベルやアニメなどでも主要な登場人物となることの多い「ヴァンパイア」。それらの作品では、ときには最強の魔物、怪物として描かれることもあり、男性の吸血鬼ならば貴族然とした魅力あふれる容姿を持ち、女性の吸血鬼であれば絶世の美女として登場します。
そんな吸血鬼は、いつどこで生まれ伝えられてきたのでしょうか?

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狂気の女吸血鬼の元祖ラミア

吸血鬼の起源は、他の魔物や怪物など通常の自然界から外れた存在と同じく、とても古いもののようです。それも世界各地に古代から伝わっていて、吸血鬼の本場ともいえるヨーロッパでは、例えばギリシャ神話に登場する海の神ポセイドンの息子ベーロスとその母リビュエーとの間に生まれたという娘「ラミア」は、上半身が女性で下半身が蛇の姿をした吸血の怪物です。

ラミアは元々がリビアの女王であったともされますが、その美しさから主神であるゼウスに見初められ何人かの子供を授かります。しかし、ゼウスの本妻であるヘラの嫉妬によって子供たちをすべて殺されてしまいました。この惨劇からラミアは狂い、他人の子供を殺すことで復讐心を晴らすようになります。そしてその狂気によって身も心も怪物となり、若い男を誘惑して一夜を共にしたあと生き血をすする吸血鬼となりました。

この吸血鬼ラミアは、同じくギリシャ神話に登場する女吸血鬼の「エンプーサ」とも同一視されていますが、エンプーサは片方の足が青銅、もう片方がロバの足をもった女性の姿をしていると言われ、ラミアと同じく男性を誘惑してその血とともに精気を吸うとされています。
ちなみに後代には、ラミアの名前は女吸血鬼の代名詞として描かれることが多くなります。

 

 

冥界の女神ヘカテに血を捧げたテッサリアの吸血巫女

同じく古代ギリシャの時代には、現在のギリシャ中部地域、エーゲ海に臨むテッサリア地方には「テッサリアの巫女」と呼ばれる吸血の巫女たちがいました。

テッサリアの巫女は女神ヘカテを祀る巫女であり、その儀式において死者の血を飲んだのだそうです。その儀式はとてもおぞましく、まずは亡くなったばかりの少年の死体を墓場から掘り返して儀式場に横たえると、狼の血と乳、雌羊の腹の中の胎児の血などでできた液体を少年の死体に塗り、生きた蛇のムチで打つのだといいます。
そして打ち続けることによって死体が動き出すと、少年の死体から心臓を取り出しその血を飲むのだとか。

なぜこのような儀式を行うのかというと、巫女たちが仕える女神ヘカテとは月と魔術を司り、豊穣や出産、浄めや贖罪を司る冥界の女神だったからです。
つまりヘカテは生と死を司る夜の女神であり、悪夢と狂気の原因ともされ、「名もなき者」としてその名を呼ぶことが憚れる怖い神だったわけで、ヘカテを鎮めるには血の供物を捧げる必要がありました。

 

 

古代の血液信仰から生まれた吸血行為

それではなぜ血を捧げるのでしょうか。それは古代の人々には、血液こそが生命の本源であり生を保ち与えることのできるものであるという、「血液信仰」があったからだそうです。だから生きた血を持つ生け贄、あるいはまだ腐敗していない血を保っている心臓などの供物を神に捧げたのです。

たしかに血を失えば生き物は死んでしまうのですから、血液にこそ生命のエナジーが宿っていると古代の人たちが考えたのも不思議ではありません。血を吸うということは、すなわち生命のエナジー(精気)を吸うということでもありました。ですから吸血鬼は血を吸うことによって生命力を補給し、そこからヴァンパイアの能力とされる「エナジードレイン」が現代に作られた物語でも描かれているわけです。

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