北欧神話を構成するエッダ(新エッダ、古エッダ、小エッダ)の概要
「神々の黄昏」という解釈で、日本でも広く浸透しつつあるラグナロクというキーワードですが、もとは13世紀頃に編纂された「エッダ」という文書に端を発しています。
この文書は、北欧神話を体系的に取りまとめた、いわば「歌劇集」であり、古い北欧神話に関する大小さまざまなエピソードが含まれています。
エッダには古エッダ・新エッダ・小エッダと、大きく3つに分類されているのですが、それぞれ構成が異なっているのが特徴的です。
3部からなる新エッダ
13世紀のアイスランドの詩人であるスノッリ・ストゥルルソンが作成したとされていることから、別名「スノッリのエッダ」と呼ばれている新エッダは、一般的に「エッダ」と短く表現される際に主に参照されている文書であり、エッダといえば通常これを指していることが多いようです。
新エッダといいながら、古エッダよりも古い時代に編纂されたとみる向きが多く(いずれも編纂される以前の、古い北欧神話の口述がベースになっているため、編纂時期は数十年程度しか違わない、といわれています)、神話に基づいてはいるものの、同時代に北欧に入ってきたキリスト教の影響を色濃く受けている作品です。
新エッダは大きく「ギュルヴィたぶらかし(Gylfaginning)」、「詩語法(Skaldskaparmal、別名「詩人の言葉」とも呼ばれています)」、「韻律一覧(Hattatal)」の3部から構成されています。
このうち第三部である「韻律一覧」は1222~3年頃、第一部の「ギュルヴィたぶらかし」と第二部の「詩語法」は、1225年頃またはそれ以降に作成された、といわれています。
章立てが多い古エッダ
新エッダの3部構成に対して、古エッダは非常にたくさんの章から成っています。
大きくは「神話詩」と「英雄詩」の2つに分類され、前者は「巫女の予言」や「高き者の言葉」、「ヴァフスルーズニルの言葉」など11編、後者は「フンディングル殺しのヘルギの歌(その1、その2)」、「ヒョルヴァルズルの息子ヘルギの歌」、「シンフィヨトリの死について」などの20編から成ります。
新旧のエッダとは別に、小エッダと呼ばれる作品群も個別に数多く発見されていますが、いずれも古い北欧神話をベースに、キリスト教の影響を受けながら編纂されたものであることから、そこで語られているエピソードには、多くの重複が見られます。
また、歌劇や詩には共通的な構成が見られ、日本の文化でいうならば、短歌や俳句のような枠組みが中世北欧で独自に考案され、エッダをはじめとした芸術作品に採用されていたことがうかがえます。