> >

麒麟はどんな姿をしているのか。本当の姿を探ってみる。

麒麟

霊獣であり聖獣である「麒麟(きりん)」は、どんな姿をしているのでしょうか。
わたしたち日本人には、キリンビールのラベルに描かれた麒麟の姿が一般的にイメージされるかも知れません。
しかし麒麟の姿かたちは、例えば龍が「ツノは鹿、頭は駱駝、耳は牛、眼は兎または鬼(幽霊)、身体は蛇、鱗は鯉、腹は蜃(蛟/みずち)、掌は虎で爪は鷹である」と細かく定義されているのと比べると、実ははっきりとはしていないのです。
はたして麒麟の本当の姿とは?という謎を、少し探っていくことにしましょう。

スポンサードリンク

麒麟は1本のツノを持った大型の鹿

中国の後漢の時代(25年から220年)の「説文解字」という書物は、最古の部首別漢字字典で様ざまな漢字を解説しています。当時の中心的な思想である儒教や五行思想、あるいは俗説などからこじつけ的に説明されたものも少なくないそうですが、このなかで麒麟については「麒、麒麟、仁獣也。麋(なれしか)身、牛尾、一角」とあります。

つまり麒麟とは、儒教で言う仁徳を備えた「仁獣」で、身体はナレシカで尻尾は牛、1本のツノがある、ということです。ナレシカとはツノのある大型の鹿のことで、北方に生息するトナカイやアメリカ大陸のカリブーを含むものとも思われます。

トナカイは家畜にできる鹿で、北欧から東北アジアまでトナカイを飼う「トナカイ遊牧文化」の人びとが広範な地域にいたと考えられています。また麒麟の身体は、同じくヨーロッパからアジアの北方に分布し、トナカイよりも小型のノロジカに似ているという説もあります。

いずれにしても、麒麟は頭に1本のツノ(2本という説もある)を生やした大型の鹿の姿をしているということでしょうか。

馬の姿をした麒麟もいた??

麒麟という漢字の「麒」は、鹿のへんに農具の「箕」を付けたもので、箕が方形で整っているという意味から、美しく整った姿をしたツノのある鹿で動物たちの長、ということだそうです。また「麟」は、鹿のへんに燃え立つ炎が揺れ動くという意味が付いたもので、揺れ動く炎のように光り輝く鹿、ということになります。

このように麒麟とは、ツノのある大型で美しい鹿をベースとした姿かたちということになりますが、一方で鹿へんではなく馬へんを充てた「騏驎(きりん)」という言葉もあるのをご存知でしょうか。その意味は鹿の麒麟と同じく、動物たちの長としての炎のように光り輝く馬ということになるのでしょう。

古代には鹿型の麒麟と馬型の騏驎の2種類が存在していた!?

鹿ベースの麒麟と馬ベースの麒麟。どうも古代の中国にはこの2種類の麒麟が存在していたようで、実際に後漢の時代には鹿型の麒麟と馬型の騏驎の像や図がありました。特に江蘇省徐州市睡寧県の「九女墩画像石」には馬型の騏驎が描かれていて、その頭には1本のツノ、そして両肩には翼が生えているそうです。

後漢のあとの魏晋南北朝時代(221年から581年)の河南省鄧州市学荘村「彩色画像磚墓」にも馬型の騏驎の図があり、こちらの騏驎も翼があって、また同じ場所から発掘された四神の図の青龍とも良く似ているとのことです。

四神は、東を司るのが「青龍」、西を司るのは「白虎」、北を司るのは「玄武」、南を司るのが「朱雀(すざく)」ですが、本来は白虎ではなく麒麟が入っていて、それがいつしか白虎に変わったという説もあります。古代には東の青龍と西の白虎は一対の存在として、良く似た姿で描かれることが多いのですが、実は青龍と麒麟が一対となっていたのかも知れません。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

Comments are closed.