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狼のモチーフを生んだ?英雄シグムンドと息子シンフィヨトリ

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最高神であり戦争と死を司る神オーディンが、ヴァルハラと呼ばれる死者の館でゲリとフレキという2頭の狼を従え、また「ウールヴヘジン(狼の毛皮を被った者)」という死をも厭わない戦士を持っていたように、北欧神話の世界において狼は特別な存在でした。

ヨーロッパの狼男の源流として狼に関わる北欧神話は欠かせないものですが、人間族の英雄の物語としてこのような話があります。

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オーディンの剣を手に入れた英雄シグムンド

オーディンの曾孫にあたるとされるヴォルスングという王には10人の子どもがいて、その長男であるシグムンドと双子の妹シグニューはひときわ美しく優れていました。

あるとき、権勢を誇るガウトランドの王シゲイルがシグニューに求婚し、兄弟たちは反対しましたが父王は受入れてシゲイルとシグニューは婚約します。そして結婚式の日、祝賀の宴の場に神であるオーディンが現れ、広間の中央にあるバルンストックというリンゴの大樹に1本の剣を刺します。オーディンは、この剣を抜いた者に褒美として与えると告げて去って行きました。

宴に連なっていた誰もが抜こうとして抜けずにあきらめてしまうなか、ついにシグムンドがこれを引き抜いて自分の剣とします。シゲイル王はその剣が欲しくなり、譲るようにシグムンドに言いますが、シグムンドはシゲイル王が剣の持ち主として相応しくないと断ります。怒ったシゲイル王は翌日帰国してしまいます。ですが帰りがけに、その非礼の埋め合わせにとヴォルスングと子供たちを自国に招待したのでした。

 

狼を噛み殺して生き残る

しかしその招待は、オーディンの剣を譲らなかったシグムンドへの報復でした。3ヶ月後、シグムンドやシグニューら子供たちとガウトランドに向かったヴォルスングの一行が到着すると、シゲイルの軍にいきなり襲われ戦いとなって、ヴォルスングは戦死し子供たちは捕らえられてしまいました。

シゲイル王はシグニュー以外の子供たちを殺そうとしますが、兄弟たちをすぐに殺さないでほしいとシグニューが懇願し、それは聞き入られます。しかしそのかわりにシゲイル王は、子どもたちに手かせ足かせをはめて森の中に放置してしまいました。

やがて森に夜が訪れるとメスの狼がやって来て、一晩にひとりずつ食い殺していきました。そしてついにシグムンドだけが残ります。その日にシグニューは人をシグムンドのもとにやって、顔にハチミツを塗らせました。その夜、狼はシグムンドを食い殺す前に顔に塗られたハチミツを舐め、口の中に舌を入れたそのとき、シグムンドは狼の舌を噛み切って殺してしまいました。

 

狼男になった英雄親子

生き残ったシグムンドのためにシグニューは地下室をつくって匿い、ある日魔女へと姿を変えてシグムンドのもとに訪れ、ふたりは結ばれてシンフィヨトリという息子をもうけました。

シグムンドは妹との間にできた息子のシンフィヨトリとともに森の中に住み、森に迷い込んだ人間を襲い金品を奪いながら暮らします。そしてシンフィヨトリが胆力を備えた若者へと成長すると、シゲイル王に復讐するために王の館に忍び込みます。しかし見つかってしまって戦いとなり結局は捕らえられるのですが、再びシグニューに助けられたふたりは王の館に火を放ちました。シグニューは復讐のために兄との間に息子をもうけたことから、生きながらえることを望まず、シゲイル王とともに焼死したのでした。復讐を果たした親子は自国に戻り、シグムンドは王となります。

狼を殺したシグムンドと息子のシンフィヨトリは、森のなかに住んでいたときに呪われた狼の毛皮を身にまとったことで、獣人=狼男になってしまったと言われています。呪われた獣人となって息子にも牙を向けて重傷を負わしてしまいますが、オーディンが使わしたと思われるカラス(レイブン)が運んで来た不思議な葉によって息子の傷を治し、狼の呪いからも解放されたのだそうです。

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