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狼男のルーツを探して…ギリシャ神話の中の狼男

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ヨーロッパ社会や文化の源流といえば、古代ギリシャや古代ローマということになりますが、西欧の三大モンスターのひとつとも言える「狼男」の源流かも知れない神話や伝承、物語も伝えられています。
狼男の起源は、はたして古代の地中海世界にあったのでしょうか。

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狼に変身させられてしまったリュカオーン王

「ギリシャ神話」によると、遥か古代のギリシャ、ペロポネソス半島の中央部にアルカディアという王国があったそうです。このアルカディアは後代のヨーロッパ人が「牧人(まきびと)たちの理想の楽園」と憧れ夢見た場所で、アルカディアは理想郷の代名詞となったことで知られます。

このアルカディアに「リュカオーン」という王がいました。リュカオーンは、同じギリシャのアテナイ初代の王であるケクロプスと同時代の人と伝えられていますから、現実の歴史ではアテナイなどの古代ギリシャを構成するイオニア人が定住した、紀元前2000年以降の頃ということでしょうか。ちなみにアテナイのケクロプス王は、大地(ガイア)から生まれ下半身が蛇、上半身が人間という獣人の姿をした神話の中の王です。

さてアルカディアのリュカオーン王ですが、この王は地上の人間世界で最初の都市であるリュコスーラを建設するなど聖王と言われました。しかしこのリュカオーン王やその息子たちは、どうやらかなり高慢な者たちだったようで、あるとき全宇宙を支配する神であるゼウスの全知全能を試そうとして、ゼウスを人間の肉の入った煮込み料理でもてなしました。ゼウスはこれを即座に見抜き、怒って息子たちを殺しリュカオーンを狼の姿に変えてしまったのです。この神話から、リュカオーン王はすべての狼男=狼人間の祖とも言われています。

 

狼を操り、狼に変身することができた神・アポロン

全知全能の神ゼウスの息子で芸術・芸能の神としても知られるアポロンは「アポロン・リュケイオス(Lykeios)」とも呼ばれていました。この「リュケイオス」とは「狼を退治し、狼を操る者」という意味です。リュケイオスは、狼を表す「リュコス(Lykos)」から来ています。

アポロンは、母である月の女神アルテミスの「トーテム獣」として、様々な動物の姿に変身することができました。「トーテム」とは、ある部族や特定の集団、人間がその生命力を得る源泉として動物や植物などを象徴とすることですが、アポロンはアルテミスのトーテムである獣に変身したということです。そのなかで狼に変身したアポロンが、アポロン・リュケイオスというわけです。

月の女神のアルテミス、そのトーテム獣である狼、そしてその狼を操り自ら狼に変身するアポロン。月の光を浴びて変身する狼男の源流が、このアポロンにもあるのかも知れません。一説には、狼に変身したアルカディアのリュカオーン王は、このアポロン・リュケイオスの化身であったとも考えられています。

ちなみに、狼をトーテム獣とする部族、民族は世界各地の狼の分布とともに古代にはいたようで、例えば6世紀に中央アジアに存在したテュルク系遊牧国家「突厥(とっけつ)」の君主の氏族である「阿史那氏(あしなし)」は、人間と狼の間に生まれた子どもたちが祖先であるという氏族神話があり、狼をトーテムとしていました。

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