賢王か魔術師か?王国を治めたソロモンの手腕と謎の魔術書
中東はパレスチナに位置するイスラエルは、今でこそ不安定な政治情勢の地域として知られていますが、その昔、紀元前1000年頃には、イスラエル王国として繁栄していました。
その頃の王であるソロモンは、高名な指導者として今でも語り継がれていますが、その実態は、(特に日本では)それほど知られているとはいえません。主な原因として、日本は少なくともいわゆる西欧キリスト教圏に含まれていないことがあげられますが、ソロモン王は、日本では考えられないほど、西欧では非常に知られた人物です。
西欧におけるソロモン王の評価として、優れた政治家であることや、大変な知恵を持った賢者であることのほかに、魔術師や魔法使いという、その実績とはちょっと異なるイメージでも語られているようです。そんな中で、「ソロモン王の鍵」というキーワードも存在しています。
ソロモン王の死とイスラエルの分裂
ソロモン王は、旧約聖書に登場するほど知名度の高い人物で、かつて栄えたイスラエル王国の第三代国王として、最盛期のイスラエルを率いてきました。しかし、当時多くの人々が信仰していたユダヤ教以外の宗教を認めたり、重税をとって国家的な土木工事を推し進めたりしたことがきっかけとなって、国力は衰退し、ソロモン王自身も亡くなってしまいます。
その後のイスラエルは安定することなく現在にまで至っていますので、結果的にイスラエル衰退のきっかけを作ってしまったソロモン王の評価は、必ずしも素晴らしいものだけにはなりませんでした。
良いイメージだけではなく、悪いイメージも浸透していく中で、伝説ともいえるようなソロモン王の逸話が生まれました。そのうちのひとつが、「ソロモン王の鍵」です。
天使から与えられた指輪で悪魔を支配?
ソロモン王は、実務的な政治手腕の評価とは別に、魔法を使ったり、悪魔を支配したりと、オカルト的な逸話もたくさん残しています。
もっともこうした非科学的な逸話の多くは、ソロモン王の評価について賛否両論の意見が出始めてから、後世になって作られたもののようで、ソロモン王が実際に著していないような書物も、「偽ソロモン文書」として出回ったりしています。そういった文書の中で、ソロモン王は、王位についていた時、天使から指輪を与えられ、その魔力によって悪魔を使役していた、とされています。
悪魔を支配するための手順は、魔術書として後世の研究科によってまとめられています。ソロモンが遺したという魔術書は、大きく分けると2種類存在しています。ひとつが『ソロモンの大いなる鍵』、いまひとつは『ソロモンの小さな鍵』です。