> >

四神の神獣、朱雀とは(3)五方神鳥との関係

朱雀

日本ではあまり知られていませんが、古代の中国では四神とは別に東西南北の4つの方位に中央を加えた5つの方位を司る神鳥を表す、「五方神鳥」という考え方があります。つまり四神では南の方位を司る「朱雀(すざく)」だけが神の鳥でしたが、五方神鳥ではすべての方位を神の鳥が司っているというわけです。

スポンサードリンク

 

5つの方位を司る5種類の神鳥

五方神鳥で5つの方位を司る神鳥とは、東は「発明」という鳥で青色を表し、西は「鷫鸖(しゅくそう)」で白、南は「焦明」で赤、北は「幽昌」で黒、そして中央は「玉雀」で黄色となります。このほかにも別の名前の神鳥をあてる説や、中央や南を「鳳凰」とする説があります。四神と同じく5つの方位には5色の色が象徴されていて、五方神鳥も陰陽五行思想が基になっていることがわかります。

五方神鳥には様々な説があるのですが、この5種類の神鳥のすべてが鳳凰であるという考え方もあります。例えば東の「発明」とは、朝日が東から昇り鳳凰が朝鳴くという意味もあり、また物事や原理原則を開き明らかにするという意味から、現代語の「発明」の語源となったと言うことです。

ちなみに朝に鳴く鳥と言えば鶏ですが、ここでは鳳凰とされています。鶏と鳳凰とには関係性があるのか?と想像してしまいますが、これについてはまたあらためて探ってみたいと思います。

 

南の焦明は小さなミソサザイ?

ところで、中国の「毛詩陸疏広要」という書物では、鳳凰にはそれぞれ5色の色の異なる5種類の鳳凰がいるとしています。赤色が多いものを「鳳(ほう)」、青色が多いものを「鸞(らん)」、黄色が多いものを「鵷(えん)」、紫が多いものを「鸑鷟(がくさく)」、白が多いものを「鷫鸖(しゅくそう)」と呼ぶのだそうですが、紫色は黒と同じ属性とされますので、この5色の鳳凰も陰陽五行思想につながっているようです。

そのつながりから考えると、四神の朱雀、五方神鳥の焦明、5色の鳳凰のうちの鳳は果たして同じ神鳥なのでしょうか?
五方神鳥の焦明について伝わる情報がほとんどなく、その姿かたちはどうも良くわかりません。その名前からすると焦明は正しくは「鷦明」と書いて、「鷦」は「ミソサザイ」という鳥のことです。ミソサザイはヨーロッパや北アフリカ、アジア各地や中国、日本にも生息するスズメ目ミソサザイ科の小さな鳥で、日本名の「サザイ」とは小さな鳥を指す「さざき」が転じたものだそうです。焦明とミソサザイがイコールか同類のものなのかはわかりません。

 

焦明は地上から天に導く鳥なのか

中国古代の戦国時代(紀元前5世紀から3世紀)の楚地方で謡われた詩の詩集である「楚辞」には、「鸞鳳に駕し、以て上游し、玄鶴と鷦明に従う」というものがあります。「鸞鳳」は青色の鳳凰の「鸞」、「玄鶴」とは鳥の鶴のことです。

つまりこの一節は、鳳凰の「鸞」に乗り(駕し)鶴と鷦明に従って川の上流(上游)に昇って行く、という内容です。鶴は古代においては仙人のお供をする鳥でした。鳳凰に乗って昇って行くとは、死んで昇天するということの意味で、そのときに鶴と鷦明に従って行くのだと言っています。

つまり鷦明は、地上から天へと導く神鳥ということでしょうか。それは同じく南の方位を司る四神の朱雀にもつながるものですが、それはまたあらためて探ることにしましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサードリンク
スポンサードリンク

Comments are closed.