日本に幽霊はいつ登場したのか?? ヒントは室町時代にあり!
「霊感」で感じるものと言えば霊、つまり幽霊ですが、それでは幽霊というものは日本の歴史上いったいいつから現れたのでしょうか。
その存在を信じるか信じないかはともかくとして、幽霊は現代でも話題にのぼるものなのですから、人間の歴史と一緒で遥か大昔から存在するのではないのか、と皆さんは思われるかも知れません。確かに霊魂や霊的なものは、日本でも古代から存在するものと考えられて来ました。しかし、一般的に皆が思う怖い幽霊となると、どうもそんなに大昔からのものではないようなのです。
室町時代に登場して来た幽霊
奈良時代の末期から平安時代に至って、恨みや無念を持って亡くなり祟りをなす怨霊が現れて来たことは別の記事でご紹介しましたが、そんな怨霊を含む非業の死を遂げたりこの世に思いを残して死んだりした人間が、幽霊となって多く登場して来るのは室町時代からのようです。
室町時代に大成した能の謡曲にはよく幽霊が題材となっているのですが、例えば「経政」という謡曲ではこんなお話が語られています。
行慶僧都が管弦を奏する者たちを集めて法要を行いますと、その夜に平経政の亡霊が現れ、法要のありがたさにここまで来たと言い、青山を手に取って奏で舞いを舞うのでした。
しかしやがて経政の亡霊は修羅道の苦しみに襲われ、憤怒の思いのなかで戦い死んだ自分の姿を恥じて、闇の中へと消え去って行くのでした。
見鬼と霊感
このように室町時代の幽霊といえば、源平の合戦で敗れた平家一門の亡霊がかなりポピュラーだったようです。回りを海に囲まれた日本では、各地に「船幽霊」の伝承がありますが、西の海に現れる船幽霊は、壇ノ浦の合戦で海に沈んだ平家の亡霊であるという話がよくあります。
平家の亡霊をはじめとして、このように日本に幽霊が登場して来るのが室町時代だとすると、その幽霊が一般の庶民にも身近な存在として怖れられて来るのは、江戸時代になってからです。
江戸時代と言えば、町人文化が隆盛する中で妖怪などの化け物文化が華開いた時代。様々な化け物たちが実際に存在するものとして知られるようになりました。人々は人間の世界と隣り合わせに存在するような、この世のものではないものを怖がりながらも多くの関心を抱いたのです。そんななかで、怖い怖い幽霊たちも登場してくるのです。