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アラビア・イスラムの錬金術師ジャービルの謎と功績


 
8世紀になって、アラビア半島はアッバース朝というイスラム社会にあらわれたアブー・ムーサー・ジャービル・イブン・ハイヤーンは、古代ギリシャにおけるアリストテレスやソクラテスといった賢者と同様に、哲学だけではなく、化学や薬学、冶金学、天文学といった多方面に、その才能を発揮していました。

ジャービルが、古代ギリシャ思想をベースに、その才能を惜しみなく注ぎ込んで確立したのがアラビアの錬金術であり、中世ヨーロッパや、ひいては現代の錬金術のイメージに、大きく貢献した人物でもあります。

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塩酸や硫酸はジャービルが発明した?

現在知られているジャービルの業績において、もっとも有名なものに、塩酸、硫酸、硝酸の発明があります。

これらの薬品の生成方法や結晶化方法は、それまで確立・可視化されていませんでした。これらの技術は、現代の科学技術のベースとなっているもので、その功績は称賛に値するものです。

さらに、王水と呼ばれる、「通常では溶けることのない、金や白金といった貴金属の溶解に使用される、濃塩酸と濃硝酸の混合液体」を発明したのもジャービルである、とされています。このあたりが、ジャービルが「伝説の錬金術師」と呼ばれる所以となっています。

さらに、いわゆる錬金術界隈の通念として、「硫黄と水銀の比率によって、金属の性質を変化させることができる」といった概念がありますが、これはジャービルが著したという『黒き地の書(現代は『Kitab al-Kimya』)』に記載されていた文言がベースとなっています。

 

今も多くの謎が残るジャービルの著書

ジャービルの著作としては、前述の『黒き地の書』のほか、『マギステリウム完成の梗概(=大要、あらすじの意味)』もよく知られているところですが、いずれも中世以降になって主にヨーロッパで翻訳されているものであり、発見されていない原文も多くあります。

また、ジャービル自身の著作ではなく、複数いたという弟子が著したのではないか、ともいわれており、このあたりの真相は、あきらかになっていません。

とはいえ後世の錬金術、特に中世ヨーロッパの錬金術におけるジャービルの影響力は非常に大きく、彼の著書は「錬金術の教科書的な存在」とまでいわれています。

もっともこれは、13世紀に『マギステリウム完成の梗概』が出回った際に、アラビア語の原文が発見されていないことから、「ジャービルの名を語って、13世紀の錬金術師が記述したものではないか」、という説も存在していて、そういった意味では「弟子の著作の自画自賛」の疑いもあります。

とはいえ、錬金術や現代化学に残した功績から、ジャービルは「錬金術の金字塔のひとり」、といえそうです。

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カテゴリ: その他

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