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シン・ゴジラに見るホムンクルスの現在形

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錬金術の世界で、「人間の手で人間を作り上げる」という課題を掲げ、中世ヨーロッパという科学技術の進んでいない時代を背景に、錬金術師パラケルススが推し進めたというホムンクルス作成計画は、前時代的な時代背景もさることながら、男性至上主義や宗教的な神優先主義といった、当時世間を覆っていた価値観にも大きく影響された中で出現したアプローチであった、と考えられます。

2016年7月に公開された映画「シン・ゴジラ」も、見方によってはホムンクルス研究当時の課題を内包しているのではないでしょうか。

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ゴジラが人間に変異する?

ゴジラは日本で考案されたいわゆる「怪獣キャラクター」で、誕生は1954年にまで遡ります。

何らかの理由で太古の恐竜(初期設定では「海棲爬虫類が陸上獣類に進化する過程の中間型の生物」とのことです)が現代まで生き残っていたところに、水爆実験や核実験の影響、つまり「人為的な影響」を受けてその姿をも変異させて、人間の前に姿を現す、といったものでした。

日本では50年以上にもわたって20本以上の主演映画が作られ、海外でも数本の作品が作られており、2016年になって、比較的初期の設定に忠実なストーリーで再び映画化されました。

今回の作品での特筆すべき点は、恐竜が人為的に変異しているその先に、人間の姿が含まれていることです。あくまでもフィクションの世界でのエピソードとはいうものの、これまでにない設定は、ゴジラファンのみならず、SFファンの間でも大きな話題となっています。

 

遺伝子の器は形状を問わない?

ホムンクルスは「作成された時点で、あらゆる知識を有している」といわれていますが、その後派生して研究・発展していったクローン技術の中で、「生命誕生のごく初期は、単純な細胞の形をしていて、その後分裂していく=胚説」が一般的になっています。

近年活躍しているイギリスの進化生物学者、リチャード・ドーキンスは、動物の種と遺伝子について「親が子を作る=つまり遺伝子がクローンを作ろうとした場合、本来均一な文字通りのコピーを作る(このため個体の集合である「種」を「巨大生物という個体のようなもの」と説明しています)のですが、適応という観点が加えられ、もともと個体が持っていた病気や決定といったリスクを補てんしながら変異すること、これが進化である、と語っています。

もともとは遺伝子という「何か」であり、種や個体の肉体、錬金術で作られたホムンクルスも「遺伝子の器である」ということです。

2016年版ゴジラの巨大な姿の一部が人間の姿に変異していること、これは「現代におけるホムンクルス」との解釈も可能である、と思われます。

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カテゴリ: その他

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