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火星への片道切符?オランダ発マーズ・ワン計画とは(後編)

火星

オランダのNPO法人であるマーズ・ワンが進めている「マーズ・ワン計画」では、アメリカのNASAが目指している「2035年目処の火星への有人往復飛行実現」よりも、10年も早い「2025年に4人の人間が火星に移住し、その後2年毎に4人ずつ移住、合計24人が火星で暮らしていく」という、仰天プランをぶちあげています。マーズ・ワンでは全世界20万人の応募者の中から、男女あわせて100人にまで移住候補者を絞り込み、着々とプロジェクトを進捗させています。

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劇場型進捗で資金調達?

しかし、マーズ・ワン計画に対しての世論の評価は、必ずしも肯定的な意見ばかりではありません。論点は大きく二つ存在していますが、まず一つ目は、マーズ・ワンの資金調達を兼ねた「劇場型戦略」にあります。

 
マーズ・ワンでは、多くの民間宇宙開発企業が資金確保の手段として、有人飛行と合わせて計画しているようなレアメタル開発やロケット輸送技術などといった資金調達手段は考慮しておらず、公募から訓練、出発までを一種の「ドキュメンタリーショー」として公開することを条件に投資家を募っている、とのことです。マーズ・ワンによると、劇場型戦略による資金調達の期待値は、オリンピック開催一回分の収益の目安である、40億ドルの5倍から10倍を見込んでいる、といいます。

 
日本の芸能界や政治の世界でも、劇場型戦略の手法を見ることができますが、移住候補者のプライバシーの問題や、科学技術とエンターティメントの混同による道義的問題など、さまざまな議論を呼んでいます。

 

 

片道切符に賛否両論

そして二つ目の論点が、「火星からの復路が計画に含まれていないこと」です。実はこの計画は火星への片道切符が前提であり、永住が前提になっています。最終候補者選考対象の100人の中に残っているという、東京藝大出身の日本人女性のひとりは、「帰ってこられなくとも、宇宙の果てまで行くという夢をかなえたい」という旨の発言をしている、とのことで、応募者の多くに同様の考えを持った方がおられることが想像できます。

 
他にも実現可能性の問題や、民間の機関が、国家レベルの開発途上の科学技術を利用したビジネスを展開していること自体の問題など、クリアすべき課題はたくさん存在しています。それでも、固定電話が携帯電話やスマートフォンに進化したり、車の燃料が、ガソリンやディーゼルなどから、ハイブリッドを経て電気や水素に変化していったりしたことと同様に、現在では夢物語のようなストーリーを、技術発展とセットで長期的に計画し、民間レベルで資金調達を主導するといった、マーズ・ワン計画のような挑戦は、今後はますます増加していくことでしょう。マーズ・ワン計画の今後の動向に注目したいところです。

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カテゴリ: その他

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