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火星探査機キュリオシティが示す火星の謎と課題(後編)

火星

総額25億ドルという予算で始まった、火星向け宇宙船マーズ・サイエンス・ラボラトリと火星無人探査機キュリオシティは、2012年に無事着陸を成功させ、試料の採取や音声、画像の採取、未知の領域の走行など、当初の想定を超える数々の成果をあげることができた、といえそうですが、「火星人はいるのか」や「人類は火星に居住することはできるのか」といった、いわゆる「普遍的な火星の謎の解明」という意味では、最初の一歩を踏み出したばかり、ともいえる状況です。

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水と生物の存在可能性

キュリシティがあげた大きな成果のひとつに、「水と細菌の存在可能性の痕跡」があげられます。いずれも映像解析による仮説がベースになっているものですが、水のほうは、水平な層からなっている岩の断層が、地球の湖の痕跡に酷似している、つまり水の流入によって岩が堆積したものによる可能性が大きい、ということで、専門家は「火星に水があったことの可能性を示すものである」、と考えています。

 
また、キュリオシティが火星の地表におよそ1.6センチメートル弱の堀削孔をあけて採取した試料からは、ヘタマイトという鉄酸化物が検出されました。これは、火星にかつて微生物が生存するための化学物質があったことを示す痕跡と考えられる、とのことで、水と並んで、生命体の存在可能性が、わずかながら認められた、ということになります。

 

 

どうやって距離と時間を短縮していくか

しかし逆説的に考えてみれば、キュリオシティが数々のリスクを乗り越えて収集した「水と生命体の存在可能性に関する現時点での物証」は、1960年代頃から仮説として語られていた事象について、実際に現地での検証着手をして一時報告を得るために、半世紀以上の年月と、気が遠くなるようなコストが必要であることも、同時に示しています。

 
これまでの人類の歴史の中で、月周辺への探索は約60回、火星向け探索は約20回程度(しかも最初の頃は失敗の連続でしたので、探査としてカウントできるのは、21世紀に入ってからの数回、という見方もできます)であるため、実際に既に有人探査を実現している月と比較すると、火星のほうはまだまだ初期段階である、といえます。アメリカのNASA主導で計画中の「2030年を目標とした有人火星探査」では、現在判明している費用面と技術面両方をクリアすべく、NASAが世界に向かって参加を呼び掛けています。地球と火星の物理的な距離を埋めるための技術力とコスト不足の課題を解消するためには、人類全体の叡智の結集と費用分担が必要になってくるでしょう。

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カテゴリ: その他

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