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ユングの分析心理学から見た錬金術と賢者の石

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中世ヨーロッパにおいて研究が重ねられていた錬金術は、「人間の肉体や金属の革命的な変換」、つまり「現代においても実現できていない不老不死や、卑金属を貴金属に変える力の獲得」を目指していた、とされています。しかし、錬金術研究が最も盛んだった数百年の間、多くの識者が仮説検証を繰り返してきたにもかかわらず、その実現には至らなかったことは事実です。

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しかし、「20世紀最大の知の巨人」といわれる、カール・グスタフ・ユングの「賢者の石」の見解は、その名に恥じず大変にユニークなものでした。「賢者の石」は、実は「物質的な理想を目的としたものではない」、というのです。

 

精神医学の大家で分析心理学の創始者ユング

19~20世紀にかけて活躍した、スイスの精神医学の大家にして分析心理学の創始者でもあるカール・グスタフ・ユングは、その知性においても知名度においても、現代の識者としての評価は、他者の追随を許さないほどの地位が確立されています。

そのユングが、中世ヨーロッパにおける錬金術に注目していました。錬金術の目的は、「不老不死や金属の物質的変換ではなく、賢者の石の獲得ではなかったか」、と考えたのです。

彼は、スイスのトゥールガウ州ケスヴィルの牧師の家に生まれ、幼いころから人間の内面に対する深い興味や注意を向けていた、といいます。ユング以前に既に評価を確立していたゲーテやニーチェ、カントといった哲学者の著作に傾倒し、さらに大学で精神医学を深く学びます。

現在でも、ユングの功績はオカルトの領域で語られることもあるくらいに、その発想や考察はユニークで、一見突飛な印象を与えています。

 

錬金術の究極の目的

そんな彼が、分析心理学を定義におけるマイルストーンとして着目していたのが、ほかならぬ錬金術です。

ユングは、精神医として多くの患者との接見を重ねていたのですが、錬金術の世界で一見荒唐無稽なイメージを表出させている錬金術師たちの主張が、患者が語る夢の世界と多くの一致を見せていることに気付きました。表面的には不老不死や金属の物質変換を主張しているかつての錬金術師達の主張が、物質的な目的達成のための仮説ではなく、実は内面的な別の「何か」を目指しているのではないか、という仮説を立てたのです。

これはユングならではのかなり大胆な仮説とはいえ、錬金術の本質にせまる、現代にも通じる普遍的なアプローチである、といえそうです。

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カテゴリ: その他

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