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錬金術の謎:賢者の石とエリクサーは同一なのか

ワイン
 
中世ヨーロッパにおける錬金術の象徴的な存在として、「賢者の石」と並び称されていた「エリクサー」は、前者が固形であったことに対し、液体であるという位置付けで語られていた、といいます。日本でも「酒は百薬の長」といいますが、錬金術における「エリクサー」は、まさに人間のあらゆる健康的な問題を解決するという、魔法の物質として伝えられていました。

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エリクサーは実はお酒?

中世ヨーロッパにも、ブランデーやワインをはじめとしたアルコール類、つまりお酒は存在していたのですが、錬金術の概念の中で語られていた「エリクサー」は、半ばアルコール類のイメージの中で語られていた可能性もあります。実際に、フランス産のブランデーベースのリキュールで、世界最古のリキュールという説が存在している「ベネディクティン」には、「エリクサー」という名を持つものも見受けられます。

こんにちでも「適量のお酒が健康に効く」という説が医学的なところでも健康志向界隈でも語られていますが、薬草酒やリキュール類の中に、「エリクサー」を含む名称を持つものが多いことからも、その「現状改善」のイメージは、中世からさほど変わっていないことがうかがえます。

 

今では「賢者の石」とはかなり意味が異なる

「エリクサー」と同じく12~13世紀の錬金術の世界の代表的なキーワードとして取り扱われていた「賢者の石」は、「化学を超越した万能薬」という意味では、ほぼ同義である、といえそうです。

しかし「エリクサー」のほうは、15~16世紀にはかなりニュアンスを変えて、強壮剤としての意味合いを持つように変化していった、といいます。そして現代に至り、お酒やエタノール、さらに「問題解決のための特効薬」といった慣用句としても使用されるようになっていきました。

もともとは「賢者の石」と同様、相当に神秘的な存在として語られていた「エリクサー」ですが、中世ヨーロッパにおいて、時代を経るごとに広まっていった、錬金術に対するどこか懐疑的なイメージが、「エリクサー」の意味をも変貌させていったのではないか、と考えられます。

 

同一ではないが本質的には同じもの?

「賢者の石」と「エリクサー」、発祥は錬金術周辺であることは同一なのですが、「賢者の石」が現代においても全貌解明に至っていないファンタジー的な存在であること、「エリクサー」がある時代からお酒や強壮剤といった実態を伴う存在に置き換えられていったことから、かなりイメージが異なるキーワードに変貌しています。

しかし、「人間の想像力や肉体的限界を超えるために引用される存在である」という意味では、両者は「その本質的な存在価値においては、同一の概念である」、といえそうです。

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カテゴリ: その他

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