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『竹取物語』…籠の中で育てられたかぐや姫、その成長の不思議

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光る竹の中から発見されたかぐや姫が主人公の『竹取物語』は、日本で最も古い物語で「物語の祖(おや)」と言われます。

竹取物語が書かれたのは平安時代初期の10世紀半ばとされていますから、いまから1000年以上も前の作品なのですが、それでは古事記とか日本書紀の方がもっと古いのでは?と思われる方もいらっしゃるかも知れません。しかし日本書紀は古代の公的な歴史書ですので、物語ではないのですね。また日本書紀よりも物語性の強いと思われる古事記も、じつは歴史書でそのタイトルのとおり古い事を記した書物。古事記は「ことのかたりごと」と、ちゃんと断りが記されています。

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それでは「物語」とは何なのでしょうか? 古事記のように「事」を語るに対して、「物」を語っているわけですが、この「物」とはそもそもは鬼や霊など不思議な力をもった存在、この世とは違う存在のことなのです。つまり「物語」とは不思議な存在や出来事を語ったお話であり、竹取物語はその原点ということになります。

 

小さなかぐや姫が籠の中で育てられた謎

さて、光る竹の中から竹取の翁(おきな)によって発見されたかぐや姫は、翁の家へと連れ帰られます。
この女の子はわずか3寸(約9cm)の背丈しかありませんから、なんと籠(かご)に入れられて翁(おきな)とその妻の嫗(おうな)に育てられることになります。虫や鳥じゃあるまいし何で籠の中に?とも思いますが、これにも謎と意味があったようなのです。

日本には古来から「髯籠(ひげこ)」という竹などで作られた籠があって、髯の籠と呼ばれるのは籠を編んで残した竹の端がヒゲのように上に向かって伸びているからです。この髯籠はむかしは贈り物を入れたり、旗竿や柱の先に付けられたりしました。現在でもお祭りの山車(だし)上部の竿の先にこの髯籠が付けられている場合がありますので、見たことがある人もいらっしゃるかも知れません。

それではこの髯籠とは何かというと、神様の依代(よりしろ:神霊の依りつくもの)なのだそうです。つまりこの髯籠の中に神霊が降りて来るわけですね。古代の人は竹の籠の中に神霊やこの世のものではない「もの」が降りて来るのを知っていて、この世の人とは思われない小さな女の子が、籠の中に入れられ育てられることに納得するわけです。

 

かぐや姫への求婚騒動の謎

籠の中で育てられたかぐや姫は、みるみるうちに大きくなっていきます。わずか3ヶ月で人並みの背丈の美しい女性になってしまったのです。それと同時に、かぐや姫を見つけてから翁が採る竹には節と節との間に黄金が詰まっていて、翁の家はどんどん裕福になっていくのです。

そこでこの女の子にかぐや姫という名前をつけてお祝いをするのですが、そのお祝いに多くの男性を呼んでしまうのですね。これが、このあとの貴公子たちの求婚騒動の発端となるわけです。

ところでこのとき、かぐや姫は何歳だったのでしょうか?
かぐや姫の年齢についても色々と研究されていて、あとの出来事から推定するとこのときは13歳だったそうです。季節は秋のはじめで、「歌垣(うたがき)」または「嬥歌(かがい)」と呼ばれる、若い男女が出会う古代からの風習が行われるときだったそうです。ちなみに女性の13歳は、古代ではそろそろ男女が結ばれる年齢としておかしくはありません。

光る竹の中に発見して籠の中で育てていた、この世のものではない女の子があっという間に美しい人間の女性になり、自らも裕福となりました。竹取の翁にすれば、今度は良い結婚相手を見つけてやりたいと思ったのかも知れませんが、それはそう上手くは行かなかったのです。

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