シュレーディンガーの猫が平行世界の概念を否定できない理由
量子力学によって物理的に説明されていたパラレルワールドは、、1887年生まれのオーストリアの理論物理学者であるエルヴィン・シュレーディンガー氏による「シュレディンガーの猫」実験によって、明確に否定されています。
この実験では、外から中身の見えない箱の中にいれた電子の動きを、同じく箱の中に仕掛けたセンサーと毒ガスと猫によって説明しようとしました。人間が箱を開けて観測するまで、生きている猫と死んでいる猫が同時に存在することなどありえない、と考えたわけです。しかしこの実験では、パラレルワールドを完全に否定するには至らなかったようです(正確には、反論が生じた、ということです)。
最初の観測をセンサーがおこなった?
パラレルワールドの可能性は、あくまでも「その事象を観測した時点で現実とされる世界が確定するのであり、それ以前の可能性が並行して存在している」という主張であったのですが、そうであれば「シュレディンガーの猫」実験の中での最初の観測、つまり事実認識は、箱の中のセンサーがおこなった、ということです。センサーによって既に「観測以前」という前提が崩れ、並行世界の実現可能性が否定されているため、この実験は無効(つまり量子力学を否定するには至らない)ととらえる反論が提示されました。
しかしさらに反論は続きます。センサー自体がミクロな大きさではなく、物理的に複数の物質の相互作用によってできている「ミクロではない物質」であったため、量子力学でいうところの「純粋な観測行為とはいえない」、という解釈も生まれ、結局パラレルワールドを完全に否定することはできなかったようです。
多世界解釈は「コペンハーゲン解釈」とも呼ばれている
アメリカの物理学者であるエヴェレットが提唱した多世界解釈は、別名コペンハーゲン解釈とも呼ばれており、分岐による多世界、つまりパラレルワールドが、観測するまでの間存在している、としています。実はこの考え方でいう「観測」は、人間が認識する時点を指す「観測」とは意味が異なるようで、「シュレーディンガーの猫」実験にあてはめると、量子力学的には放射性崩壊(アルファ崩壊)から猫の生死までの間を指しており、そういった意味でも、量子力学の全否定には至りませんでした。しかし、これでもまだパラレルワールドの真相解明、謎の完全究明にはなっていません。なぜならば、どう考えても「生きている猫と死んでいる猫が同時並行的に存在している」とは考えにくいからです。