パラレルワールドと選択しなかった未来への可能性
人が「今」を過ごしている、世界や時間とは別に、選択しなかったがゆえに「起こりうる可能性はあったが、実際には起こりえなかった」世界が、実は現実世界と並行して存在し、現実とは別の歴史を作り続けているという、パラレルワールドの概念は、多くの人にとってファンタジー以上のリアリティを持っていると同時に、近年にも物理学者をはじめとした有識者によって、新たな仮説が次々と発表されています。
タイムトラベルから見たパラレルワールド
多くの人におなじみのタイムマシンやタイムトラベルといった「空想科学上の世界」についても、パラレルワールドは思考の深みや可能性の重要性を示唆しています。もし過去や未来を行き来することができたとしても、起こりうる世界が重層的に存在しているとすれば、よく映画や小説で語られているような「過去に遡ったり、未来に行ったりして歴史を変える」ことは困難ではないか、との仮説を投げかけています。現実世界とは別に、選択肢の数だけ無数にパラレルワールドが存在しているとすれば、過去や未来はその組み合わせのひとつでしかなくなるからです。パラレルワールドは、タイムトラベルをもひとつの「選択肢」としてとらえる、といったような、無限の可能性を秘めているものでもあります。
人間の意識も物質的なもの?
パラレルワールドの源流となっている、1950年代のアメリカの物理学者、ヒュー・エヴェレット3世の学説の支持者であるというイギリスの物理学者、デイヴィッド・ドイッチ氏は、驚くべきことに「人間の意識も物質的なものである」、との見解を、量子計算理論の観点から提唱しています。このことは、目に見えない「選択肢」や「意識」というものが、実際に触れたり計測したりすることが可能な「物理的な事象となりうる可能性」を示すものである、といえそうです。デイヴィッド・ドイッチ氏は、その学説の中で、チューリングの計算理論、ゲーデルの不完全性定理、ドーキンスの生物学、ポパーの認識論といった、信憑性の高い学術理論を組みあわせて更に考察を深めて世界的な理論に昇華する、といった試みもおこなっています。
パラレルワールドは単なるフィクションではない
これらの事実から考えると、パラレルワールドが、単なる「空想科学的な発想のひとつ」ではないことがおわかりか、と思われます。仮説検証が成り立つことは、つまり「事実や科学として立証しうる」ということにも直結しますので、パラレルワールドに関する今後の研究には、大いに期待がかかるところです。