ムー大陸・レムリア大陸の伝説と神智学のアプローチ
ムー大陸伝説の文脈の中で語られる考え方のひとつとして、神智学という学問が存在しています。これは、神秘的な直感や、瞑想や啓示、それらにまつわる思弁などをプロセスとして、神の存在や接点、人類の起源といった、神聖かつ高度な認識を獲得しようとする学問であり、神知論、接神論、スピリチュアリティ等とも表現されています。ムー大陸やムー文明の伝説と神智学との結びつきは、どのようなものなのでしょうか。
さまざまな流派が見られる神智学
神智学のアプローチはさまざまであり、流派としてはグノーシス派や新プラトン主義、キリスト教神秘主義、インドの神秘思想などがあげられますが、大きくは二つの流派に分類される、といわれています。ひとつは現代のキリスト教に通じる、17世紀頃にヨーロッパで体系化されたキリスト教神智学、もうひとつは、1875年に設立されたという、神智学協会の流れをくむ思想である、とされています。
いずれも、仮説検証型のアプローチというよりも、霊的、神秘的なアプローチをベースに、直接的な知、つまり神と呼ばれる存在の本質や、根源的な人間の本性、存在意義といったものを探求している学問である、といえます。現代科学の水準において、確かなもの、つまり「検証済で、繰り返し再現が可能であり、確実であると断定できるもの」とはいえないものであるため、オカルティズムと表現されることもあります。
不確かであるが根源的な存在としてのムー
神智学協会は1875年頃に、アメリカはニューヨークで設立された神秘思想を標榜する団体で、現在も活動を続けているとのことです。この教会の創設者の一人であるヘレナ・P・ブラヴァツキーという人物が1888年に発表した著書『シークレット・ドクトリン』のなかで、かつて太平洋にレムリア大陸という大陸が存在していた(ユーラシア大陸と同じくらいの規模である、としています)との説をとなえているのですが、この説に指導者として登場するラ・ムーは、ムー大陸という呼称の命名のベースともなっており、またレムリア大陸とムー大陸を同一視されることとなった要因のひとつとしてもあげることができます。これらの主張は、1930年頃に、ジェームズ・チャーチワードという人物によって『失われたムー大陸』という著書としてまとめられ、広く一般に知られることとなりました。
神智学におけるレムリア大陸の位置付けは?
先に述べた神智学の探求対象のひとつ、人間の根源的な起源の探求というテーマにおいて、象徴的な存在としてレムリア大陸が位置づけられています。神智学の説によると、レムリア大陸は、およそ7万5千年前には既に存在していた、とのことです。