本当にオーパーツ?バグダッド電池の真偽を紐解く
1932年(1936年、という説もあります)、イラクはバグダッド近郊の、テルと呼ばれる遺丘から出土したバグダッド電池は、パルティア遺跡(「パルティア人の遺跡」を指しますが、ホイヤットランプファ遺跡ともいわれています)の遺物とされ、一見壷のような形状であることが特徴です。セレウキア遺跡や、クテシフォン遺跡といった、近隣の遺跡でも類似した壷が見つかっていますが、2000年も前の時代に作られたというこの壷は、本当に世界最古の電池なのでしょうか。
素焼きの壷に鉄棒が入っている
バグダッド電池を構成している部品は、素焼きの壷、鉄棒、銅製の筒、アスファルト、それに電解液という、シンプルなものです(発掘された壷には電解液は残っていませんでしたが、当時は酢やワイン等を使っていたもの、と推測されています)。これは、現代において一般的に使用されている電池とほぼ同じ構造であり、1938年には、イラク国立博物館のドイツ人研究者ヴィルヘルム・ケーニヒ氏が、「バグダッドで発見された壷は、金メッキなどをおこなう際のツールとして作られた、ガルバニ電池(イタリアの医師にして解剖学者であるルイージ・ガルヴァーニ氏が考案した、現代の電池の原型となるもの)の一種ではないか」、との論文を発表しています。
電池メーカーが復元実験に成功した
後年、1978年になって、バグダッド電池は、西ドイツのヒルテスハイム博物館において、「パルティア朝時代の世界最古の電池」として展示されることになります(この博物館で、「シュメール・アッシュール・バビロン展」というイベントがおこなわれた際に展示され、この壷がバグダッド電池として、世界的に知られるようになりました)。ヴィルヘルム・ケーニヒ氏の論文を裏付けるための実験は、ドイツの電池メーカーであるボッシュによっておこなわれ、実際に電流を発生させることに成功しています。
液の代わりに入っていたのはパピルス?
しかし、パルティア遺跡以外の場所で出土している、バグダッド電池と類似した壷には、パピルスが入っていたことも確認されています。また、パルティア遺跡で壷が見つかったのは民家の遺構であり、壷のそばには呪文が書かれた3つの鉢が置かれていた、とのことです。このことから、バグダッド電池は、たまたま形状が電池に酷似していただけで、実は宗教儀式に使われるために作られたのではないか、との見解も存在しています。とはいえ、近年2005年にも、有名な科学専門コンテンツである、ディスカバリーチャンネルでも再現実験がおこなわれ、微弱ながら発電が確認されていますので、現時点においては、「バグダッド電池は、世界最古の電池説」が有力な説である、といえそうです。