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ハリカルナッソスのマウソロス霊廟の発掘品と大英博物館の課題

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ハリカルナッソスのマウソロス霊廟は、ハリカルナッソスが古代ペルシア帝国の関連国であるカリア国だった時代に、当地の統治者であるマウソロスと、その妻アルテミシアを安置するために、当事者自らが計画して創建した墓です。紀元前2世紀頃当時の地中海地域を代表する壮麗、壮大な建造物のひとつとして提唱された、世界の七不思議のなかにも入れられています。現在のトルコのボドルム半島にあったハリカルナッソスのマウソロス霊廟ですが、発掘された関連装飾品などの一部は、英国の大英博物館に納められています。原産国であるトルコと発掘された芸術品を管理する英国、一見不思議に映る組み合わせですが、背景としてどのようなことが考えられるのでしょうか。

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大理石の彫像をめぐる提訴

近年になってトルコ共和国は、ハリカルナッソスのマウソロス霊廟にあったとされる大理石の彫像を大英博物館から返還するべく、提訴に踏み切っています。トルコは、同国の古代の芸術作品の返還を求める訴訟をいくつか起こしており、アメリカのダラス博物館の例では、対象となった芸術品の返還に応じた、とのことです。大英博物館は、英国以外の国の古代の芸術品を数多く管理していることから、この手の提訴問題を多く抱えているようです。

 

文化財返還問題の難しさ

トルコや英国の例に限らず、長い期間の間に、原産国から外国に文化財が流出するような例は、世界的にも数多くあります。一般的に考えられる違法な略奪や盗掘の他にも、植民地支配や戦争による国家的な収奪、オークションなどの合法的な売買といった場合もあり、その扱いは当事者国同士、および各国の裁判所による判断により、さまざまな結果を見ることとなっています。背景には、1972年に発効されている、文化財不法輸出入等禁止条約があります。これにより、原産国が所有権利を主張して、先に述べたアメリカの博物館の例のように、司法判断の結果、実際に返還となった例もたくさん存在しています。

 

管理体制の問題も

一方で、関係国間で返還することに合意して、実際に返還された後、原産国側の管理が十分ではないがために、貴重な文化財が盗難にあい、闇市場やオークションに出品されるといった例もあとを絶ちません。こういったケースでは、現地で管理している文化財が破壊、汚損、盗難などにより、消滅の危機に瀕しているのに対し、英国やアメリカなど、芸術品の移管時、および現在においてもいわゆる先進国とされる国では、良好で安全な保管がなされている、という逆転現象が起きてしまっています。世界情勢が刻々と動いている中、トルコにおけるハリカルナッソスのマウソロス霊廟の彫像に限らず、人類全体で守っていくべき古代からの文化財の取り扱いは、先に述べた条約の側面だけにとらわれず、まさにケースバイケースで対応していく必要がありそうです。

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カテゴリ: その他

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