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龍神・乙姫はどこにいる?浦島太郎の物語と山幸彦・海幸彦神話

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浦島太郎の伝説に出て来る龍宮城は、一般的に「海神=龍神」の棲むところとされています。しかし、浦島太郎伝説が記されている『日本書紀』や『丹後風土記』、また物語が整えられた中世の『御伽草子』でも、龍宮城の主であるはずの龍神は登場しません。

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またこれらの書物の記述に出て来るお姫さまは、よく知られる龍神の娘の「乙姫」ではなく、「亀比売(ひめ)=亀姫」です。一方、古代中国で、長江(揚子江)につながる洞庭湖の辺りに伝わる龍宮伝説では「龍女」が登場しました。

それでは、日本の神話や伝説では「海神=龍神」や龍神の娘の「乙姫」はどこにいるのでしょうか? それを探るために、浦島太郎伝説から少し離れて別の神話や伝説を見てみたいと思います。

 

海神が登場する山幸彦と海幸彦の神話

皆さんは「山幸彦と海幸彦」の神話をご存知でしょうか。
この神話は『古事記』と『日本書紀』にそれぞれ記されていて、浦島太郎伝説のもとになった神話と言われています。それでは古事記に即して簡単にご紹介してみましょう。

 
「天照大神」の孫の「邇邇芸命(ににぎのみこと)」は、「葦原中国(あしはらなかつくに/日本のこと)」を治めるために高天原から地上に降りました。(天孫降臨)その邇邇芸命が地上で出会った「木花咲耶姫(このはなさくやひめ)との間に生まれたのが、「火照命(ほでりのみこと/海幸彦)」と「火遠理命(ほおりのみこと/山幸彦)」の兄弟です。

海幸彦は漁師として海で魚を捕り、山幸彦は猟師として山で獣を狩っていましたが、ある日、弟の山幸彦は兄にお互いの道具と仕事の交換を提案します。しかしどちらも獲物を得ることができず、おまけに山幸彦は兄の大切な釣り針を無くしてしまいました。

怒った海幸彦は弟を責め、山幸彦は1,000本の釣り針を作りますが赦してくれません。山幸彦が浜辺で嘆いていると「塩椎神(しおつちのかみ/潮流の神)」がやって来て、山幸彦を海の中の「綿津見神(わたつみのかみ/海神)」の宮へ連れて行ってくれたのです。

この綿津見神の宮で山幸彦は海神の娘の「豊玉毘売命(とよたまひめ)」と出会い、結ばれて幸せな日々を過ごすのですが、3年経った頃、兄の釣り針を探しに来たことを思い出します。そこで海神が魚たちを集めて聞くと、赤鯛の喉に釣り針が引っかかっていることがわかり、山幸彦は無事にそれを取り戻し地上に帰ることになりました。

 

2つの玉と豊玉毘売命の出産

海神は、帰る山幸彦に「潮満つ玉」と「潮干る玉」という2つの玉を持たせます。海神は言います。「もし兄の海幸彦が高い場所の土地に田を作るのなら、あなたは低い場所に、兄が低い場所ならば高い場所に作りなさい。兄が攻めて来たら潮満つ玉で溺れさせ、許しを請うたら潮干る玉で助けてあげなさい」

山幸彦が地上に帰って海神に言われた通りにすると、兄の海幸彦の田には水を司る海神によって水が行き渡りませんでした。怒った兄は山幸彦を攻めて来ましたが、潮満つ玉の力によって洪水を起こして溺れさせ、兄が苦しんで許しを請うと潮干る玉で助け、こうして海幸彦は山幸彦に従うようになったのでした。

一方、海神の娘である豊玉毘売命は山幸彦の子供を授かりますが、天津神の子を海の中で生むわけにはいかないと、地上の山幸彦のもとに来ます。豊玉毘売命は「子供を産むときは本来の姿に戻りますので、産屋の中を覗かないように」と山幸彦に言いますが、彼は覗いてしまいます。すると豊玉毘売命は「八尋和邇(やひろわに)」の姿になっていたので、山幸彦は驚いて逃げ、豊玉毘売命は生まれた子を置いて海に帰ったのです。

 

龍神との関係性はある?

少々長くなりましたが、これが山幸彦と海幸彦の神話のあらすじです。
兄弟の争い(海幸彦は隼人の祖神とされ、もともといた隼人族を天津神が征服した話という説があります)や、地上に帰るときに持たされるもの、それによって起こる出来事などは違いますが、海神の宮で歓待され姫と結ばれるなど丹後風土記や御伽草子にある浦島太郎伝説とよく似た部分もあり、この神話がもとになったというのも頷けます。

また、この神話には龍神に関わって来る要素があるのです。それは海神からもらう「玉」と、豊玉毘売命の本来の姿とされる「八尋和邇」です。山幸彦と海幸彦の神話と龍神をめぐる話は、次の記事でご紹介することにしましょう。

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