龍の起源を追い求めて…龍は中国北部・遼河流域で生まれた!?
日本はもちろん世界中に古くから伝説があって、人々の文化や記憶のなかに刻まれて来た「龍」という存在。それではその龍は、果たしてどこから私たち人間の前にやってきたのでしょうか。
西洋やキリスト教に伝えられる「ドラゴン」はひとまず置いておいて、日本や中国、アジアやオリエント(中東地域)の龍だけを見てみても、その起源を探るのは一筋縄では行きません。龍の起源については実に様々な説があって、いつどこから龍がやって来たのか諸説紛々、龍のことを語る人の数だけその説の数があると言っても、言い過ぎではないのかも知れません。
ただ龍の言い伝えが産まれたと言える地域は、アジアでは中国、インド、オリエントと考えられています。つまり人類の古代文明が発祥した場所という訳ですね。龍はそれだけ古い存在なのです。
中国からやってきた龍
日本の龍がどこからやって来たのかと言えば、それは一般的に中国からということになるでしょうか。ただし、中国から来たとしても、それがそのまま日本に定着したという単純な話ではありません。
鬼や天狗などと同じように外国から来たものでも、日本の古代からある文化や伝説と結びついて、日本独特の存在になっていくものは多くあります。またひとくちに中国と言っても、古代には色々な文化圏や種族の違う地域に分かれていて、そのどこから来たのかによっても話は異なります。
ただ日本に伝わる龍は、同じように神にも等しい存在にもなっていった天狗の場合と異なり、中国で成長したイメージや意味合いが大きく影響しているのは間違いありません。
中国の龍の起源
それでは、中国の龍はどこで生まれたのでしょうか。
龍の起源というと、墳墓から出土した「玉竜」と呼ばれるヒスイの装飾品から、北部の「紅山文化」がよく紹介されています。この紅山文化は、紀元前4700年頃から紀元前2900年頃の間に、現在の中国河北省北部から内モンゴル自治区東南部、遼寧省西部にあった新石器時代の文化で、世界四大文明として知られる黄河流域の「黄河文明」とは異なる、北方の遼河流域にあった「遼河文明(りょうがぶんめい)」と呼ばれるもののひとつです。遼河は河北省や内モンゴルから始まり、渤海に注ぐ川。遼河文明があった地域は、そのあとの時代で言えば万里の長城の北、蛮族のいたエリアであり、黄河文明から続く中華文明との関係性は実はよくわかっていません。
しかし龍の痕跡はこの紅山文化よりもさらに昔、紀元前6200年頃から紀元前5400年頃に存在したとされる「興隆窪文化(こうりゅうわぶんか)」や、紀元前5400年頃から紀元前4500年頃の「趙宝溝文化(ちょうほうこうぶんか)」にまで遡るとも言われています。共に遼河流域の「遼河文明」に生まれた文化であり、興隆窪文化の遺跡からは地面に石を置いて形づくられた龍が、また興隆窪文化からは土器に描かれた龍が発見されているそうです。
もちろんその姿は、後の時代に中国で一般的になった龍の姿とは違いますが、今から8000年あまり前という古さから、このモンゴルやツングース(東北アジアの民族)の地と交わる現在の中国北方の地域が、龍が伝わるふるさとのひとつであると言えるのではないでしょうか。