アメリカとイタリアとではここまで違う!国別ゾンビ映画の特徴比較
「生ける屍」として、死者が歩き回るといったキャラクターで定着している「ゾンビ」は、数多く映画化されている人気のモンスターキャラクターでもあります。世界各国で取り上げられているゾンビのキャラクターですが、もっとも多く作られ、なおかつホラーファンにも有名な存在となっているのがアメリカの作品とイタリアの作品です。この両国において、ゾンビのキャラクターはどのように捉えられ、どのように描かれているのでしょうか。
アメリカが発祥のゾンビ映画
ゾンビを題材にした映画を最も多く製作しているのはアメリカで、最も古い映画は1940年代までさかのぼります。1943年に作られた「ブードゥリアン」は、ゾンビのルーツであるブードゥー教を思わせる原題が付けられています。その後も現代に至るまで、世界各国で実に100本以上の作品が作られましたが、現代のゾンビのキャラクター=代表的な特徴である「既に死んでいるため頭を撃たないと死なない」、「人に噛み付き、噛み付かれた人もゾンビになる」、「火を怖がる」といったものが初めて明確に描かれた作品が、1968年のアメリカ映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」といわれています。
アメリカのゾンビ映画のルーツが描いたテーマ
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は、ニューヨーク出身のジョージ・A・ロメロ監督によって世に出されました。この作品は「ゾンビ三部作の1作目」という位置付けで作られ、その後1980年代に3部作が完成した後も、さまざまな解釈でゾンビを題材にした映画を作り続けています。氏の作品の中で一貫して描いているテーマは、ゾンビそのものというよりも、「ゾンビに相対するチームの人間模様」というもので、理不尽で恐怖に満ち溢れた解決しがたい事象に対して、性別も価値観も異なるグループが、解決に向けてどのように挑んでいくのか、といったドラマに仕上げています。このためゾンビは、映画が始まった時点で「既に理不尽な存在として、存在してしまっているもの」として描かれています。
アメリカとイタリアの大きな違い
ルーツともいうべきアメリカの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の公開後、1970年代に入ってから、「よりゾンビ伝承に近いブードゥー教との関連が濃いゾンビ」が、イタリア発で公開されました。1979年のルチオ・フルチ監督の「サンゲリア」が該当します。当時としては残酷な描写が多く、日本でも大きな話題になった作品ですが、その後イタリアで発表した「ビヨンド」や「地獄の門」などでも、同氏は「ゾンビが存在する理由を説明する」といったスタンスで、作品を作り続けます。アメリカ作品と比較すると、宗教的なものや死の世界などがより深く描かれていて、両氏の性格や価値観の違い、お国柄があらわれているようで、興味深いところです。