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現代アメリカ・ヨーロッパにおける「ゾンビ」の存在の捉えられ方

ゾンビ
 
ハイチで生まれ、ブードゥー教という土着の宗教とともに広く知られた存在になっている「ゾンビ」ですが、古くから「死者が復活する」といったシチュエーションで語られ続けているため、近年でも欧米の学者などの識者によって研究がなされたり、映画やゲームといったエンターテイメントの世界でも、その知名度が衰えることはありません。アメリカやイギリスでは、「ゾンビ」はどのような存在として捉えられているのでしょうか。

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死者を復活させる研究

現代医学の世界でも、「長寿」や「不老不死」、「アンチエイジング」といったようなテーマが真面目にとりあげられ、多くの識者の頭脳とコストを使って、研究が続けられています。昔からいわれている「死者の復活=ゾンビ伝説」も、近年は研究の遡上にあがったりもしています。1900年代に活躍したスイスのアルフレッド・メトロー氏や2000年代に入ってから研究結果を発表しているイギリスのローランド・リトルウッド氏などが知られています。彼らはいずれも人類学者であり、ゾンビの存在には否定的な見解を示しているようです。

 

人間の心理が生み出すゾンビの存在

先にあげた人類学者以外にも、心理学者や医学博士など、多くの人々がゾンビ研究をおこなっていますが、注目すべきが「他人のそら似や伝言による間違いの存在」です。ゾンビの存在を信じたり、目撃したと信じている人々は、心理的に不安定であることが多いようで、死んだはずの知人に出会ったと信じ込んでいたり、生きていて欲しいと思っている相手の目撃証言を信じ込んでしまったりしている、という心理的な作用が、ゾンビ信仰の背景に存在しています。

これは何もゾンビに限った話というわけではなく、宗教にすがることになってしまうような人間心理の有力な一面を示したものである、という見方もできます。科学的に実在しているかどうか、という論点も当然存在しますが、「現在もブードゥーのゾンビが存在する」と証言する人々の深層心理は、普通に暮らす多くの人々の心理的な一面を語っているに過ぎない、ともいえます。

 

軍事訓練における仮想敵になったゾンビ

一方欧米では、そういった土着的な信仰とは対照的に、「ゾンビは完全に架空の産物である」という前提で、映画やゲームといったエンターティメントの世界で語っていることが多い、というのが実情です。端的な例が、2011年にアメリカでおこなわれた軍事訓練の仮想設定において、「絶対にありえない架空シナリオ」として、「全世界がゾンビに襲われた」というシナリオが採用されている、という例です。

同じアメリカで1938年「宇宙人襲来」のラジオドラマで、事実と勘違いしたリスナーによってパニック状態が起こったこととは対照的です。「宇宙人襲来が本当に起こるかもしれない」と、多くの人々に信じられていたことを示すエピソードですが、ゾンビの存在は(少なくとも現在は)欧米で暮らす人々のほとんどが信じていない、といえそうです。

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カテゴリ: その他

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