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独特の存在感を放つ「ウプイリ」:スラヴ人の間に伝わる吸血鬼伝説

コウモリ お化け屋敷
 
ロシアに伝わる民話・伝説の中でも、「吸血鬼ウプイリ」の伝説は非常に有名で、また世界各国に伝わる吸血鬼伝説の中でも異彩を放っています。ロシアの「吸血鬼ウプイリ」伝説とは、どういったものなのでしょうか。

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スラヴ人の伝承のひとつ

ウプイリは、ロシアを含むスラヴ人の文化圏で古くから伝わっている吸血鬼の呼称で、1840年代の貴族作家A・K・トルストイのロシア語での処女作『吸血鬼』で取り上げられているところをみると、それ以前からスラヴの地の死生観や民族性の奥底に既にウプイリが根付いていて(一説によると4世紀頃には既に吸血鬼の概念が存在していた、といわれています)、これが代々伝承されてきているもの、と思われます。スラヴ人の文化圏とは、ロシアをはじめ、ルーマニアやポーランド、ブルガリアなどが該当します。

 

姿はコウモリで顔は人間

ロシアのウプイリは姿も非常にユニークで、コウモリの体に人間の顔を持っている、と伝わっています。また、変身できる能力を持ち、美男や美女に変身することができる、ともいわれています。近隣の国々では(言語の違いによるものとも思われますが)その呼称が微妙に違っていて、ブルガリアではヴルコラク、ポーランドではウピオル、ルーマニアではストリゴイのほか、ノスフェラトゥが有名です。ノスフェラトゥは吸血鬼の呼称としてドラキュラなどと同様に非常にポピュラーですが、もとはルーマニア語です。

 

ロシアの思想を映し出す特異なキャラクター

ドラキュラに代表される、他の地域の吸血鬼は、アメリカやイギリスで今でも頻繁に映画化されていることと比較すると、ロシアのウプイリについてはスラヴ文化圏での映画化の例は少なく、2004年の「ナイト・ウォッチ」や2006年の「デイ・ウォッチ」、他に合作としては1992年に「地獄の黙示録」で有名なアメリカのコッポラ監督が作った「ドラキュラ」に、アメリカやイギリスに加えてルーマニアも参画しています。

ウプイリは、吸血鬼の特徴として一般的にいわれている「銀を嫌う」、「心臓に杭を打ち込むと絶命する」など、他の欧米地域の吸血鬼の属性との共通点を持っている反面、その姿やどこはかとなく漂う「異形のもの」としての立ち位置は、古代ルーマニアにキリスト教が流れ込んだことで生じた、人々の死生観や価値観の変貌に対するおそれなどが混ざり合ったことで形成されていった「独特の存在感」が色濃く反映されていて、このことが「あまり商業映画化されていない」ことの理由になっているのではないか、と思われます。

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カテゴリ: その他

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