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江戸時代の妖怪ブームを作った画家・鳥山石燕が創る鬼の世界

鬼伝説
 
江戸の妖怪大流行の火付け役となった鳥山石燕の4冊の妖怪画集には、鬼の名前が付いたものや鬼と関係する妖怪が19種類ほど登場します。それらの鬼たちは古代から伝説や物語の中から題材を取ったもののほか、石燕が創作した空想の妖怪も含まれています。
今回は石燕が描いた鬼で、これまでこの記事で登場していない鬼をいくつかご紹介してみることにしましょう。

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動物の姿をした恐い鬼

「牛鬼(うしおに、ぎゅうき)」。牛鬼は伝承では、頭が二本の角のある牛で胴体は鬼の姿をしているものや、その反対で牛の胴体に鬼の頭の姿のものがいるそうです。また牛の頭にクモの胴体を持っているとか、牛の頭と鬼の胴体に羽をはやして空を飛ぶという伝承もあるとか。
牛鬼はとにかく恐くて残忍な鬼というか妖怪で、人間を襲い食べてしまう、毒を吐く、その姿を見ただけでも病気になってしまうのだそうです。主に西日本に伝わっているものなのですが、なぜか江戸の浅草にも現れ、江戸時代に編まれた『新編武蔵風土記稿』には浅草川(隅田川)から牛鬼が飛び出してきたという記述が残っているそうです。

「陰摩羅鬼(おんもらき)」。京極夏彦さんの小説のタイトルにも登場する陰摩羅鬼は、中国や日本に伝わる妖怪で身体は鶴のような姿をした怪鳥。死んだばかりの人間の「気」がこの妖怪を生みだし、鳥の胴体にその死んだ人間の顔が載った不気味な姿をしています。名前に鬼が付いていますが、「摩羅」は魔物のことでそれに「陰」と「鬼」をつけて強めたものですから、狭い意味での鬼とはちょっと違うのかも知れません。

 

ひと口で人間を食べてしまう鬼

「鬼一口(おにひとくち)」。鬼一口は鬼の名前というのではなく、鬼がひと口で人間を食べてしまうことを紹介しているものです。平安時代の『伊勢物語』に「ある男が身分の違う女性のもとに何年も通ったが、ある夜その女をさらって蔵の中に入れると、翌朝にはその女の姿が無くなっていた。これは鬼にひと口で食べられてしまったのだ」という話があります。
鳥山石燕は、この話を在原業平と天皇の女御の二条の后の話として紹介していますが、このような鬼が女をひと口で食べてしまう話は、ほかの物語集にもいくつかあります。昔はこのようにこつ然と人が消えてしまうと、鬼にひと口で食べられたのだと解釈したのだそうです。

「栄螺鬼(さざえおに)」。貝のサザエが鬼となってしまった妖怪です。その理由を石燕は中国のことわざに基づいて「スズメが海中に入るとハマグリとなり、モグラも地上に出るとウズラになるというのだから、サザエも鬼になることもある」と紹介しています。
この栄螺鬼は、奇想天外な空想から創作された妖怪のようにも思えますが、実は房総半島や紀州の伝承では、栄螺鬼が女に化けその女を泊めた家の亭主が殺された、海で溺れている女に化けた栄螺鬼を助けて犯すと睾丸を食いちぎられた、といった怖い話が伝わっています。

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