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創世記における人間観の謎:時代を遡る遥か太古の出来事が記されている書物

創世記

 

1.はじめに

誰でも自分の目線で事物を見ます。同じものでも人によって違うのはこのためです。
真に理解するには、相手の目線でも見なければなりません。歴史の理解も同じです。
創世記にある、人の創造や、大洪水物語は、書かれた時代を遡る遥か太古の出来事です。
時代の差から来る認識の差を考えに入れねばなりません。
創世記の筆者らのいた地域や時代の人文社会的な特徴も創世記に反映されているでしょう。
皮相的な把握ではこれらの違いを識別できません。

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2. 創世記における人

2.1 創世記の記述

以下の文は旧約聖書創世記第1章の冒頭、天地創造の記述に続く人に関する記述を引用したもので、数字は段落番号です。

 
(26) 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。

 
(27) 神は自分のかたちに人を創造された。
すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。

 
(28) 神は彼らを祝福して言われた。
「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。
また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。

 
(29) 神はまた言われた。
「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなた方に与える。
これはあなた方の食物となるであろう。

 
(30) また地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える。」
以上 創世記第1章より」

 
なお、第2章は人を造った詳細が、第3章はイブがエデンの園で蛇にそそのかされて知恵の実を食べ、アダムにも勧めて神の怒りを買う経緯が、第4章ではアダムとイブに耕作者になるカインと牧畜者になるアベルが生まれたこと、カインがアベルを殺したことから、神に特別の印をつけられて追われる話、アダムとイブに3番目の男子セツが生まれた話などが展開します。

 
第5章でセツの家系が詳しく述べられます。

 
第6章の冒頭では、人が増えたこと、人の娘たちが美しくなり神の子らとの間にネフィリムと呼ぶ子らが生まれるようになったことを述べます。
それに続き、人の考えることが悪い事ばかりなので洪水を起こして滅ぼす決意をしたことをノアに告げ、指定の構造の方舟をつくり、生きものと食料とをのせることを指示します。

 
第7章は大洪水の詳細、第8章と9章は大洪水の終わりとその後の神の祝福などが述べられます。

 

 

2.2 解説

人の創造や大洪水物語が史実としても、創世記執筆時を遡る遥か太古のことです。
洪水はBC10,500年頃とされており、人の創造はそれを遡る20から30万年前になります。
(1) 創造された人の特徴
「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、・・・」とあることから、人は神々のかたちに似せて造られたのです。
かたちにとは、外観のみならず、手足の動き、視聴覚や会話の能力、皮膚の状態なども考慮に入れねばなりません。
また我々と言う表現から神は複数いて、しかもキリスト教のいう倫理性の高い神ではなく、生々しい神だったことも考慮しなければなりません。

 
(2) 人への祝福と権利の贈り物

 
(26)での神の意思表明に続き、(28) で「産めよ、ふえよ、地に満ちよ」という祝福と、地を従わせ、魚と鳥と地に動くすべての生き物とを治めよと言う指示があります。
ところが、人は増えるにつれ悪いことばかり考えるようになったので、ノアの家族以外は洪水を起こして滅ぼそうとし、大洪水の後にはノアの家族に同様の祝福をします。
悪いこととは何でしょう。
倫理道徳の欠如、神々への反抗、人の急増、劣化の進行 ???。

 
(3) ネフィリムがいる
神と人の娘との間に子ができます。
1/2、3/4、1/4など、様々な神性をもつ子が生まれますが、世代を重ねるにつれ神性は減少していきます。

 

 

3. 人による支配について

多くの日本人は、地球を従わせる権利や、すべての動植物を支配する権利を人がもっているとは思いません。
自然や動植物と共存しようとする思いを日本人は基層にもつからです。
しかし日本以外では、この旧約聖書の考え方が常識であることを知らねばなりません。
しかも、支配の対象は自然や動植物だけでなく、以下のように人間にまで拡大します。

 

有色人種の支配

以下は近世以降における人の支配の例です。

(1) 大航海時代、南米の国々を征服し多量の金を略奪しました。

 
(2) アフリカの人々を奴隷として売買しました。

 
(3) インディアンの土地を奪い生活や命を奪いました。

 
(4) 帝国主義思潮のもとアジア・アフリカ諸国を植民地化しました。

 
(5) 戦局の帰趨は明らかなのに、ソ連をけん制する意味もあり2種の原爆を広島と長崎に投下しました。

 

事物による人の支配

今日では人や国を直接支配する愚をさけます。
代わりに、制度や規格を含む事物による間接的な支配が主流です。
間接的な支配は見えにくいため普通の人には意識できまません。
以下は代表的な例です。

・情報発信源の占有による情報の支配
・保険や金融による資金の支配
・英語による文化の支配
・医薬による健康の支配、
・情報通信技術の支配
・肥料・種子による食料の支配など

 

4. おわりに

太古はよかったのですが、今の地球では、地球の支配権を人に与える神の祝福は解釈によっては大変危険です。
本来なら権利には相応の責任を伴うのですがその記述が欠落しています。
おそらく創世記が描く世界では必要なかったのでしょう。
しかし今日の世界では、人の魂の劣化が進む一方、社会は複雑になって争いが増え、人が使う道具は強力になっていきます。

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カテゴリ: その他

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