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高橋貞子と千里眼事件。明治の終わりに起こった公開実験と真偽論争の結末は悲しいものだった

超常現象
 

千里眼…遠方の出来事や将来のこと、人の心を見通す能力。
ドラマやアニメなどには頻繁に出てくるこの超能力、実は日本で昔「千里眼事件」と呼ばれる事件が実際にあったのを知っていますか?

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明治42年のお話です

少しでも超常現象に興味がある方なら、名前は一度は聞いたことがあるかもしれません。それではことの起こりから見ていきましょう。
時代は明治42年5月。
東京帝国大学教授、福来友吉宛てに、熊本で中学校長をしている知り合いからこんな依頼が舞い込みました。
「すごい透視できる女がいるんだってー」
その女というのが、御船千鶴子。
兄の催眠術実験を手伝っているあいだに、だんだんと透視能力が出てきたということでした。

 

透視に興味を持った福来助教授

心理学のなかでも一般とは異なる精神の働きについて研究していた福来助教授は、透視能力というものにとても興味をもちました。
最初は簡単な、郵便での透視実験からスタート。
見込みがあると気づいた福来助教授は、実際に千鶴子に会って透視実験を重ねました。
千鶴子の透視方法は、実験物を手にして、他者に背を向けて行うという独自のスタイル。
実験結果はおおむね成功。千鶴子は箱の中身を見ずに、透視で当てることができたのです。

 

 

明治43年 東京で大実験が行われました

明治43年9月、東京。
福来助教授は、大々的な公開透視実験を実行しました。
立会人は物理学者の山川健次郎など偉い人9名。マスコミも招待しての大規模な実験です。
用意した実験物は鉛のケースに文字を書いた紙を入れ、ハンダづけして密封したものを20個。そのなかから千鶴子が自分でひとつ選び、誰も入れない別室でひとり透視しました。
鉛のケースのなかに入っていた文字は「盗丸射」見事千鶴子は言い当てたのです。

と思ったら、「もとからそんな文字はなかったよ」と、20枚の紙すべて書き残していた者が指摘しました。

 

 

厳密に行われたはずの実験でしたが・・・

調べてみると、以前福来助教授と簡単な郵便を使った手紙実験をしているときに使用した紙だということが判明。
お守りとして持っていたのが、実験に混ざってしまったとのことでした。

 

 

実験結果はモヤモヤですが、スピブームの火付け役になったことは間違いありません

なんだかモヤモヤの残る実験でしたが、これをきっかけに千里眼一大ブーム到来です。マスコミはこぞって新聞に取り上げ、社会現象を巻き起こしました。
ゆるくいえば、今のスピリチュアルブーム、パワースポットブームのようなものでしょうか。「誰にでも毎日3分で千里眼になれる」のようなハウツー本などが売れたんだそうです。

 

 

触れずに透視する女性長尾郁子

ここで、もうひとりの超能力者が現れます。
香川県に住んでいる長尾郁子。
郁子の特徴は千鶴子とは違い、実験物に触れずに見るだけで透視できることでした。同時に、念じた文字を物に浮かび上がらせる念写もできたといいます。
ここで登場人物はもうひとり増えます。
東京帝国大学物理学科講師、藤教篤。
千鶴子の透視を「別室でコソコソ何してるかわかんないし、背中向けてるし全部あやしい。ニセモノだ」と決めたかった藤は、年者実験を始めました。

 

藤と長尾郁子の行った実験

内容は、藤が用意した乾板への念写。箱、布、鉛、銅などを使って何重にも密封し、カバンにしまったものが実験物です。
明治44年。郁子の家で公開念写実験がはじまりました。
郁子は鞄をひと目見てこう言いました。
「その中に板なんて入ってないじゃん」
実際カバンのなかは何も入っていなく、藤いわく
「なんか入れるの忘れちゃったかも」

なお、実験前何者かがカバンに触れた形跡があったと言われています。

 

 

何かに邪魔される実験・・・

念写実験はあらためてもう一度行われました。今度は福来助教授のロールフィルムへの念写です。
舞台は再び郁子の家。
しかしまた実験はうまく運びません。実験開始直前、離れのあいだに置いてあったフィルムが缶ごと何者かに持ち去られる事件が勃発したのです。
フィルムは数時間後、郁子の透視で捨てられていたものが発見されました。缶のなかには切られたフィルムと、脅迫文が。
「カクレテイタスト イノチハモラッタゾ」

 

 

好奇の目がスキャンダルを期待する目に

またしても実験はうやむやに終わり、マスコミの報道は好意的なものから一転、スキャンダルなものへと変わっていきます。このところは現代と似ていますね。
このころ藤は記者会見で「郁子の能力はウソで手品と同じだよ」というような内容を発言しています。大衆もそれを信じました。

 

 

続けて死亡した被験者

その後1月18日御船千鶴子は服毒自殺で死亡。
後を追うように2月に長尾郁子は病死。
被験者が2人も続けて死亡したため、この事件をきっかけに日本では超能力を真っ向から研究するのはタブーになりました。

 

 

満を持して登場する高橋貞子。そう!あの貞子です!

まだまだ諦めきれない超能力肯定派の福来助教授は、その後高橋貞子と出会います。
貞子の実験で千鶴子と郁子の決定的な違いは、べつの人格が乗り移ったかのような言動で、透視と念写ができたことです。
公開実験をしようとしたのですが、ときはすでにアンチ霊能力。
霊能力者はすべてインチキで下劣なものとして叩かれたのです。貞子への実験はついぞされることはありませんでした。

 

貞子は、ホラー小説や映画の「リング」での山村貞子のモデルでもあります。
福来助教授は大学を退職、自ら超能力を得るために高野山で修行をしました。
人びとを翻弄したのは千里眼ではなく、3人の女たちの方だったのかもしれません。

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