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シュメールの神エンキと大洪水伝説~創世記のルーツとなった神話

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シュメールの神話で、地上と冥界を審判し運命を定める神々「アヌンナキ」。その上位7柱の神々のうちのひとりであるエンキは、アブズと呼ばれる深淵を司る知恵の神であり、水が生みだす豊穣を司る神でもありました。

エンキは、人類の創造に深く関わった神でしたが、人間が文明を獲得した後にも事あるごとに深い関わりを持ちました。

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エンキの神による言語が分かれた理由

旧約聖書に記された創世記の物語の多くは、もとはシュメール神話から伝えられたものだという説はよく知られています。

例えば、世界の人びとの話す言語が異なる理由はバベルの塔の物語に出て来ますが、シュメール神話ではエンキの神が関わるお話として語られています。

かつては、蛇やサソリ、ハイエナやライオン、野犬や狼などはおらず、人間に敵対するものはいませんでした。シュブールとハマジの国やウリ(アッカド)、マルトゥは、シュメールと同じ言葉が話されており、このように世界全体は最高神であるエンリルのもとで、安らかな調和のなかにありました。

あるときエンキの神は、シュメールの都市国家のひとつであるエリドゥの王に知恵を授けて、それまで同じ言葉を話していた人びとの口から出る言葉を変えさせ、それによって争いをもたらしたのだそうです。

エリドゥの都市はシュメールのなかでも古い5つの都市うち最も古い都市であり、この都市の神こそがエンキでした。エリドゥに関する神話では、エンキから王権を授けられたアルリム王が28,800年、次のアラルガル王が36,000年と、2人の王で合わせて64,800年間を統治したあと都市国家エリドゥは陥落し王権は潰えたということです。

 

オリエント最古の大洪水伝説とは

このエリドゥの都市を含む5つの都市は、シュメールにおける大洪水以前に存在した都市国家であるとされています。

旧約聖書ではノアの箱船で有名な古代の大洪水ですが、シュメールの神話では地上に増え過ぎた人間たちが騒ぐ姿が煩わしくなり、人間を滅ぼそうと初めは旱魃を、次に飢饉を、そして疫病をもたらします。しかしエンキがアトラハシスという人間に灌漑や麦の栽培、医療の知識を与え、エンリルの3回にわたる企てを阻止しました。

そこでエンリルはアヌンナキの神々の会議を招集し、大洪水によって人類を滅ぼす計画を企て人間にはその計画を漏らさないようにと通達します。しかしエンキはアトラハシスにこの神々の企てを伝え、アトラハシスの家族が乗る舟の作り方を教えます。こうして7日続いた大洪水からアトラハシスの一家は生き延びることができましたが、エンリルは怒り人間に計画を漏らしたエンキと人類への罰がアヌンナキの神々の会議で検討されます。

しかしエンキは、罪のないアトラハシスの一家を罰するのは公平ではないと訴え、もし人類が増えるのを適度に抑制し、自然界の掟を守るのであれば人類を滅ぼさないという約束をアヌンナキの神々から取りつけたのでした。

このエンキの神の伝説は、古代オリエントにおける最古の大洪水伝説であると考えられています。

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